コラム

 公開日: 2014-02-26  最終更新日: 2014-06-04

沖縄の戦場へ(その1)

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






〈この丘の上にあるものは、ああ、配水タンクとネオンを見下ろす展望台〉



〈小さな碑盤では、ああ、米軍の火炎放射器が日本軍を焼いている〉

 2月20日、初めての沖縄行きのため、空港へ向かう途中、メールが届いた。
 現地は雨、雨具必携との知らせだが、仙台市内で枕経の修法を行い、そのまま駆けつける強行軍ゆえ、余裕がない。
 ままよ、と搭乗者になった。
 あにはからんや、晴れとなった那覇空港の荷物受取所では、同じ便に同乗の同志A氏(さる道場主)に声をかけられた。
 やはり一緒だったB氏(教諭)も来られ、出迎えてくださった主催者C氏(防大)とD氏(僧侶)に最初の目的地慶良間(キラマ)チージ(通称すりばち丘、シュガーローフヒル)へ案内していただく。

 ジェームズ・H・ハラス著『沖縄 シュガーローフの戦い』は記す。

「五十年前に男たちが死んでいった場所は、いま、マクドナルド、ファミリーレストラン、ケンタッキー・フライドチキン、アウトレット、消費者ローン、中古屋が立ち並ぶ想像を絶する場所となっている。」

「一九九三年、沖縄県はこの地区の再開発をはじめると、地中からは、人骨、水筒、錆びた軍需品や装備品の一部などが掘り起こされた。
 一九九三年、沖縄県による新たな配水タンクの建設が計画され、必要な造成工事なされた時点で、地元の芸術家グシケン・セイチョウが、シュガーローフに歴史を説明する碑文と、平和を祈るモニュメントの建設を提案した。
 彼は『那覇市には、沖縄戦を祈念するモニュメントがないが、県民は、ここで起きたことを知る必要がある』と語った。
 第六海兵団協会もこのプロジェクトを後押しし、最終的に那覇市が建設を許可した。」

 また、同著を翻訳した猿渡青児氏は平成22年、この一帯について書いた。

「一九四五年(昭和二十年)五月に、本書で記述されている激戦が繰り広げられた、那覇市北方の安謝川から、安里川の地域は、那覇市の中でも、最も変貌した地域の一つである。
 戦後、この場所は米軍が接収し、米軍嘉手納基地の軍人・軍属向けの住宅地として利用され、一九八七年に日本側に全面返還された。
 その後、那覇新都心と呼ばれる、都市計画にもとづいた新しい街がつくられた。
 ショッピングセンター、シネコン、公園、オフィスビルなどが立ち並ぶ光景は、とても60年前に接近戦闘が繰りひろげられたとは思えない場所に変貌している。」

「『那覇市おもろまち一丁目六番地』これが、現在のシュガーローフの住所である。
 丘は大きく削られ、頂上には那覇市により排水タンクが建設された。
 タンクの周囲は遊歩道がつくられ、展望台も設置されている。
 また、シュガーローフの激戦を記した碑文も設置されているが、人通りはまばらである。
 丘は、中心部以外は周囲を削られているが、昭和二十年当時は、現在の『おもろまち』駅近くまですそ野がひろがっていたと思われる。」

 碑文は小ぶりなもので、米軍の死傷者数などはあっても、日本軍については「学徒隊・住民を含め多数の死傷者を出した」としか書かれていない。
 米軍の侵攻を一日でも引き延ばすため、最後の一兵までも戦い抜いたという真実は伝わらない。
 米軍の記録『沖縄 シュガーローフの戦い』は、夜間、一人で突撃を敢行し、射殺された「亡霊のような」「ミイラ男」について書く。

「やつの足には包帯がまかれていた。
 片方の足は撃たれていたんだ。
 頭にも包帯がまかれていた。
 そのため片方の目しか見えなかった。
 おまけに腕も包帯がまかれて、三角巾でつられていた。
 でも彼は手榴弾を持っていた。
 彼は満足に歩くこともできず、足を引きずりながらやってきたんだ。」

 アメリカ軍は後方に豊富な物資があり、糧食にも医療にも。もちろん弾薬にも不自由のない戦いだったが、日本軍は違う。
 『沖縄 シュガーローフの戦い』は書く。

「おかしなことだが、ジャップを撃ち殺しても、あまり出血しなかった。」
「アメリカ兵が撃たれると、この世のものとは思えないほど出血した。
 だけど日本兵は血が出ない気がした。
 やつらはただ死ぬだけだった。」

 D氏が心をこめて用意し、A氏、B氏、C氏も手伝い、強風を避けるるよう展望台のすぐ下に小さな祭壇が用意された。
 白足袋に履き替え、折五条の袈裟をかけて地面へ正座する。
 C氏が急いでジャンパーを脱ぎ、座布団代わりにと提供してくださったが、もちろん、丁重にお断りした。
 
 見渡す限りの〈戦場〉に結界を張る。
 街のネオンの向こうには、前方から左手に書けて、首里の丘が低く延びている。
 生者も死者も、本来持っている汚れ無き仏性が輝き出るよう、お清めを行う。
 声明(ショウミョウ)を唱え、東方からも南方からも西方からも北方からも、この現世へ、み仏の慈光をいただく。
 不動明王様の修法により、重ねて、苦や悪の辟除(ビャクジョ…取り払う)と結界の法を結ぶ。
 み仏方をお讃え申しあげる。
 あらゆる因縁を解き、あらゆる塞がりを破摧する。
 九字を切る気合は見えぬ海までも届いたと感じられた。
 重ねて、八方天地の仏神にご加護をいただく。
 あらゆるものが即身成仏(ソクシンジョウブツ…今、このままで、み仏たる真姿になる)し、結界内が密厳国土(ミツゴンコクド…真実の世界)となるよう、お力をいただく。
 仏法のお授けを行い、極めて遅まきながら、引導を行う。
 この世とあの世との境を明確にし、いかなる苦悩や憎悪も因縁として遺さぬ修法は、半世紀の時間を超えて御英霊をはじめとする御霊方へ通じた。
 また、当時、この地域の戦闘でいのちを失ったあらゆる生きとし生けるものへ因縁解脱の法を結んだ。
 いまだ、ご供養を受けていないあらゆる御霊方へ、順次、ご供養を行う。
 初七日の不動明王様を初めとし三十三回忌までの十三仏様と、五十回忌の愛染明王様までの法を結ぶ。
 百回忌はきっと、志ある後輩が後に続くだろうと考え、あえて予修法要は行わなかった。
 当時、生きてあった生きものたちへの供養法も行う。
 死者も生者も仏性が開くよう祈り、み仏方へ感謝の誠を捧げ、この場をお守りくださった不動明王様をお讃え申しあげ、修法は終わった。

 十三仏様のご供養あたりでだったろうか、急に雨となった。
 ご英霊をはじめ、いのちを落としたあらゆるものが流す涙雨であろうと感じた。
 即身成仏している導師も、人間の部分において、心に涙雨が降った。
 こめられたのは何だったろうか……。
 修法が終わる頃になり、雨はからりと上がった。
 ご参列の方々がそれぞれお線香を捧げ、供養し、供養会は終わった。
 C氏は、見晴るかす首里の稜線上にご英霊方が捧げ銃(ツツ)の敬礼で並んでおられるのを確信したと言われる。
 正座したコンクリートの地面は、混ぜ込まれた小石たちが痛くもなく、途中から明らかに温かくなり、まるで座布団上に坐しているようだった。
 一言だけ申しあげた。
「ご英霊をはじめ、人間はもちろん、当時、地上でも地下でも生きていたはずのあらゆる生きとし生けるものへ、供養のまことを捧げました。
 たとえご遺骨は私たちの足下にあろうとも、御霊方は、み仏のご加護により、解き放たれたと信じています。
 生きているうちに、いつかは南の戦場へ行き、祈りたいという願いが叶いました。
 役割を果たさせていただいたことに、心から感謝申しあげます。」

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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