コラム

 公開日: 2014-03-02  最終更新日: 2014-06-04

勇気こそ地の塩なれや梅真白 ─人間・福島─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。









〈『福島 土と生きる』からお借りして加工しました〉

 太平洋戦争末期の昭和19年、成蹊学園に奉職していた俳人中村草田男(クサタオ)は、教え子を戦地へ送り出す際に詠んだ。

「勇気こそ地の塩なれや梅真白」

 地の塩は、聖書に登場する。

「あなたがたは地の塩である。
 だが、塩に塩気がなくなれば、その塩は何によって塩味が付けられよう。
 もはや、何の役にも立たず、外に投げ捨てられ、人々に踏みつけられるだけである。」

 イエスは、信徒となった者たちを祝福した。
 神を信じる者は、この世に生気も潤いももたらすであろう。
 しかし、信仰を失えば、塩気のない塩のような役立たずになるというのである。

 時に草田男43歳、洗礼を受けたのは82歳で死ぬ前日であり、いかなる思いで教え子たちへ「地の塩」と言ったのかはわからない。
 ただ、寒風の中で花開いた真っ白な梅から、もろもろの思いを振り切って出撃する勇気をもらうよう祈ったのではないか。
 迷うのも、悩むのも、決意を固めるのも、地にあって生きる者ゆえである。
 そうして〈在る〉ことがすでに、地の塩として生き生きと生きている証拠である。

 草田男は、東大俳句会に入ってから東京都の母校青南小学校を訪ね、決定的な一首を詠んだ。
「降る雪や明治は遠くなりにけり」
 この時も、今年と同じく東京は大雪だった。
 降りしきる雪の勢いに呑まれ、時空の感覚が薄れてしまい、思わず出た言葉だったらしい。
 その13年後、教え子に手向けの句を詠むとは思ってもいなかったことだろう。

 草田男がはたらいた成蹊学園はその後、成蹊大学などへと発展し、現在の安倍総理や作家の桐野夏生や小池真理子などを輩出する名門校となった。
 まだ寒い東北の地では、梅の開花が鶴首されているが、同じ梅を詠んだ梶井基次郎の一首も忘れられない。

「梅咲きぬ温泉(イデユ)は爪の伸び易(ヤス)き」

 この句が生まれた昭和初期までは発展する日本があった。
 戦後、世界史に残る奇跡の復興を遂げた日本全体にも一時期、こうしたゆとりの日々があった。
 しかし、それはもう、急速に遠ざかりつつある昔の話。

 2月28日、インターネット上の仮想通貨ビットコインの取引所「マウントゴックス」が東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。
 およそ470億円が煙となった事態に、マルク・カルプレス社長は謝罪会見を行った。
 しかし、終始薄ら笑いを絶やさない様子に唖然とした向きも多かったのではなかろうか。
 少なくとも、被害者の精神的、物質的被害を、〈人間に起こったできごと〉として真剣に受けとめている様子はみじんも見られない。
 ことわざ「蛙の面に小便」を思い出し、昭和60年、悪徳商法で多くの被害者を出した永野一男豊田商事会長が二人の男に刺殺された事件も思い出した。

 大石芳野氏の写真集『福島 土と生きる』に目を通した。
 ここには、筆舌に尽くせない悲嘆があり、絶望がある。
 しかし、血の通う人間の不屈の精神もある。
 我々は、あの震災と原発事故で何を失ったのか?
 何に気づいたのか?
 そして、どこへ行こうとしているのか?
 どこを目ざすべきなのか?
 真の勇気とは何か?
 大石芳野氏は同著のあとがきに記した。

「土と共に生きる人たち、染みついた放射能に抗(アラガ)い格闘を続ける福島の人たちと問題を共有し合うことの大切さを、福島で出会った多くの一人ひとりにカメラを向けながら、改めてしみじみと思う。」

 真っ白な梅が咲き、勇気をもらう時、血の通った人間として、よく考えてみたい。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
Q&A
セミナー・イベント
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
村上春樹氏の「影と生きる」に想う ─影が反逆し始めた世界─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

自衛隊員の本音 ─出征する覚悟、辞める無念─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 不戦堂建立への道 ]

12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ