コラム

 公開日: 2014-04-18  最終更新日: 2014-06-04

ねじれた愛とまっすぐな愛 ─「ダライ・ラマ『死の謎』を説く」を読む(22)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 平成6年、ジャーナリスト大谷幸三氏は、インドのダラムサラにおいて、ダライ・ラマ法王への質問を数日間かけて行い、回答をまとめた。
 それがテキスト「ダライ・ラマ『死の謎』を説く」である。

第四章 愛と慈愛、そして性愛

1 真実の愛

○ねじれた愛と、まっすぐな愛がある

「現代、人々は愛についてかまびすしく語る。
 愛にはさまざまなものがある。
 人を愛する、あるいは、金銭を愛する。
 あるいは、神の愛と言ったりもする。
 では、愛とは何か。
 それぞれの愛は異なるものなのか。
 異なるとすれば、どのように異なるのか。」

 今、若者たちへ「何に最も関心がありますか?」と訊ねたならば、「愛です」という答が多いのではないだろうか。
 それは、流行歌に愛という言葉が氾濫していることによっても容易に想像できる。
 端的に言えば「君が欲しい」であり、具体的には「君の身体が欲しい」、「君の心が欲しい」となろう。
 また、「最も大切なものは何ですか?」との問いにも、「愛です」と答える若者が多いのではないか。
 東日本大震災において、善意の人々は心に愛を抱きながら、自分にできることで援助活動をしてきたはずだ。
 愛こそが人類にとっての宝ものであると考えている向きもたくさんおられることだろう。
 こうした〈愛〉とはいかなるものか?

「一般的な考え方によれば、愛とは愛する対象への親近の情を意味している。
 それを敷衍(フエン)してわれわれは日常、名声を愛するとか、財産を愛するとか、性欲をその感情の底にひそませて人を愛すると言ったりする。
 だが、こうした愛はねじれていると言わねばならない。
 無知の上に現れる愛の形態だと言わねばならない。」

 法王は、私たちが一般的に考えている「愛する対象への親近の情」は「ねじれている」と説く。
 それは「無知の上に現れる」姿だと言う。

「本物の愛、真実の愛、種々の宗教的伝統に根ざした、特に大乗仏教に根ざした愛(慈愛)とは、こうした個々の人間の感覚や情感の発露としての愛とは、まるで異なったものである。」

 法王は、仏教に根ざした愛は「慈愛」であり、「個々の人間の感覚や情感の発露としての愛」とはまったく別ものであると指摘する。
 み仏が持つ二つの力の一つは智慧であり、もう一つは慈悲、ここで言う慈愛である。
 それは私たちの心の中心にあり、ともすれば自己中心的あるいは自分勝手な思考によって隠されがちな霊性の核でもある。
 法王はまず、そうしたものではなく、私たちの感覚や情感に現れる愛の正体を観る。

○所有欲に根ざす愛は、憎しみへと変容する

「よく言われる愛とは、往々にして自分自身を愛するための愛でしかない。
 それは自己の愛する対象を所有したいという感情に、ほぼ完全に依拠した感覚である。」

「この人、この物は私のもの、あるいは私のものであるはず、と言うような。
 こうした愛は、自分の欲望をより大きくしようとする、あるいは、自分の欲望を充足させようとする感情から起こっている。
 ひじょうにしばしば、これらの感情は、その愛の対象になったものへの顧慮、思いやりを欠いている。」

 冒頭に書いた「君の身体が欲しい」、「君の心が欲しい」にある心は何か?
 それは所有欲である。
 欲しいという言葉に明確ではないか。
 手に入れれば嬉しいし、入れられなければ悔しい。
 そこにあるのは、対象が自分の思う通りになるかならないか、である。
 法王はその点を「愛の対象になったものへの顧慮、思いやりを欠いている」と指摘する。
 自分と相手との人間関係において、主役はあくまでも自分でしかない。
 愛しているつもりなので、相手を思いやっているように錯覚するが、真の思いやりとは相手を主役にする姿勢であり、欲しがっている自分が主役である限り、思いやりは表面的なものでしかない。

「したがって、このような愛は、愛というより欲望そのものだが、自分の期待する結果が得られた場合にのみ、自分の努力に対する成果が得られた場合にのみ、成就することになる。」

「だが、もし、自分をも愛してくれていると考えていた愛する対象が、その態度を変えたり、振る舞いに愛の終わりを匂わせたりしたなら、あるいは、求愛を撥ね付けたり、自分の期待に背くような行為に出たりしたなら、このときにはいったいどうなるか。
 自己の欲望を満足させようとする期待が裏切られたならどうなるか。
 こうした愛は、いともすみやかに憎しみへと変容する。」

 愛が憎しみへと変容する可能性があるのは当然である。
 自分の意志を動かしている「欲望」は、満たされていれば愛として現れ、満たされなければ憎しみとなるだけのことだ。
 私が高校生の頃、愛について話し合う授業があった。
 私は「思いやり」が核であると主張して愛が実践された例をいくつも挙げたが、A君は「性欲さ」と言って笑った。
 自分の浅はかさが情けなかった。
 自分にも思慕する相手がおり、A君の指摘は図星だったからである。
 慈悲の例を外に眺めつつ、関心はあっても自分にはまだそうした心が薄く、自分を突き動かしている内なる主人公は性欲だった。
 以来、A君は生涯、私にとっての北極星となった。
 私は北極星の光に照らされつつ、悩み、乱れ、のたうち回りながら半世紀を生きてきた。

「なぜこうした愛は憎しみへと変化するのか。
 それはこの種類の愛が〈我(ガ)〉の上に打ちたてられているからだ。
『私』が愛するからだ。
 それが理由のすべてである。
『私』はどうすれば彼女、あるいは彼の肉体を、心を所有できるか。
『私』の欲望はどうすれば満たされるか。
〈我〉があってそこには〈他〉がない。
 他者は『私』の、いわゆる愛のために存在するにすぎない。」

 法王は、〈他人〉を〈自分〉のための存在でしかなくしてしまう我欲に気づけと説かれる。
 愛という言葉をオブラートにしつつはたらく醜い我欲を直視せよと説かれる。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

消えた因縁 ─心の檻(オリ)から脱した話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

「みやぎシルバーネット」20周年おめでとうございます ─無私の編集長につながる方々─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ