コラム

 公開日: 2014-04-20  最終更新日: 2014-06-04

許された死刑 ―母親の平手打ち―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈河北新報様からお借りして加工しました〉

 4月19日付の河北新報は、「絞首刑寸前 息子殺された母『許し』」を掲載した。

 イラン北部ヌールで、死刑囚が公開処刑される寸前、殺人事件で殺された被害者の母親が公衆の面前で罪を許したため、彼は首からロープを外され、禁固刑となった。

「死刑囚の男は2007年にけんか相手を殺したとして、死刑判決を受けた。
 公開処刑が決まり、15日朝、広場で黒い布で目隠しをされ、椅子を使った絞首台に立った。
 しかし、被害者の母が集まった群衆に向け、男を許すとスピーチ。絞首台に上がって男の頬を平手打ちすると、夫と共に男の首からロープを外した。

 イランではイスラム法(シャリア)に基づき、被害者の家族側からの求めがあれば、刑の執行延期や軽減が認められる。

 被害者の父は地元で知られた元サッカー選手で、現在は指導者。死刑囚は教え子だった。
 罪を許した母は『私がどんな思いをしてきたか分かりますか』と群衆に訴え、死刑回避を求める圧力への複雑な胸中ものぞかせた。
 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、イランでは昨年、少なくとも369人に死刑が執行された。」

 ここには、私たちが死刑という制度から脱し、人を殺さないで済む道が示されている。
 それは「許し」である。
 人から許された者は社会からいのちを奪われない、ということは一つの正義であり、人を手にかける仕事からその担い手を救う道でもなかろうか。

 今回のできごとがイスラム教を背景とした思考と法にあったことは重要である。
 被害者側は被害そのものによる苦しみだけでなく、憎悪が自分の心から離れない第二の苦しみをも苦しまねばならない場合がある。
 復讐による憎悪の解消を夢想する一方で、むしろ許してしまいたいと考える瞬間があっても、なかなか叶いはしない。
 社会が加害者へ刑罰を与えたからといって、社会正義は守られたと感じながらも、自分自身の憎悪がからりと晴れるわけでもなく、人生相談に来られて「相手の刑罰が確定してから、心にポッカリと穴が空いてしまいました」と訴える方もおられる。
 そんな時、宥恕(ユウジョ…寛大な心で許すこと)には宗教心が要るのではなかろうかと強く思う。

 決定的だったのは、イスラム教に裏打ちされた法によって宥恕の道が示されていたという点にある。
 その道は法となっているために、イスラム社会に住む人々は、具体的で明確な選択肢があることを知っている。
 憎悪と宥恕の葛藤を超えられるかも知れない社会的手段がある。
 今回、被害者の母親は、「どんな思い」を抱えながら決断したのだろう。

 平成18年10月2日、アメリカ東部ペンシルバニア州ランカスター郡において、キリスト教の一派であるアーミッシュが運営する学校で暴漢が5人の女子児童を撃ち殺し、自殺するという事件があった。
 そのおりに、家族や仲間を殺された人々は、犯人の家族を許している。(http://hourakuji.blog115.fc2.com/blog-entry-485.html
 当時、朝日新聞はこう書いた。

「容疑者の家族は、アーミッシュの一員ではないものの、地域に住んでいる。
 アーミッシュの人たちはこの家族を事件の夜から訪ねて許しを表明し、手をさしのべたと伝えられる。
 容疑者の家族は現地の主教を通じて被害者の家族への面会を求め、遺族の一部は容疑者の家族を子どもの葬儀に招いたという。
 アーミッシュの社会は現代的な暮らしや暴力を拝し、死後の世界への強い信仰をもっているとされる。
 一般に『力』が信奉される米国で、悲嘆にくれる中にも暴力を許して包み込む生き方に、米メディアは『慈悲の深さは理解を超える』『女の子の驚くべき勇気』などとして報道している。」

 当山は、死刑囚が許されるには、第一に本人の改悛、第二に被害者の宥恕が必要であると考えている。
 この二つが揃った場合、刑が執行されないという道を残して置くべきではなかろうか。
 そこへ至るために、犯人側と被害者側双方に対して宗教の果たす役割もあるものと思われる。
 今回のできごとにおいて、犯人の母親と被害者の母親が同じ場所で共に涙する場面は、世界中の人々が記憶に留めておいて欲しいと願っている。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

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