コラム

 公開日: 2014-04-29  最終更新日: 2014-06-04

死者と通じる ―引導を渡す、鳥のご葬儀を行う―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈『木香舎』代表家具職人増野繁治氏の聖なる道場〉

 ご葬儀において「引導(インドウ)を渡す」のは、亡くなった方が、この世とあの世との区切をはっきりとつけ〈後に引く〉ものを残さないよう、み仏のご加護をいただく最も深秘な修法の一つである。
 ご葬儀のお次第では、よく、「読経」と書かれているが、僧侶がご葬儀を担うのは、ただ、経文を読み上げるためではない。
 読んだり唸ったりするのなら、朗読家や浪曲師や歌手の方が上手である。
 僧侶がプロたるゆえんは、〈法を結ぶ〉ところにある。
 法を結ぶとは、限りなくみ仏の世界へ近づいて非日常的次元を現出させ、日常生活においては隠れているみ仏の世界との感応によって、み仏のご加護をいただくことである。
 ご葬儀ならば、行者自身が、この世とあの世とが溶け合っている微妙な接点で死者を送らねばならない。
 それは、あの世との境界に立つことであり、行者の存在をかけた究極の宗教行為である。

 ご葬儀の後、A家のご親族が人生相談にご来山された。
 霊障に苦しんでいたご親族の一人が、なぜか、ご葬儀の翌日から〈カラリと晴れた〉という。
 かねて足をはこんでいた行者の元を訪ねたところ、「誰かが連れて行った」と判断された。
 きっと、あの引導の瞬間だったのだろうと考え、お礼に来られたのである。
 私は霊能者でも何でもない、一介の行者であり、ご葬儀の場に、霊障で苦しんでいる人がおられたとは気づかなかったし、そんな意識もまったくないままに、ただ、修法によって区切をつけただけである。
 生前、会ったことのない死者と苦しんでいた方との間にいかなる魂の交流があったのかは知るよしもない。
 引導の〈解き放ち〉が、目に見えない世界へ何をもたらしたかも知らない。
 ただ、引導を渡す瞬間までの間に、あの世との境界へ入り、故人の魂が放つ存在のシグナルをつかみ、幾万の行者・聖者たちから錬磨の精華として伝授をもって伝えられて来た法を結んだに過ぎない。
 それは、プロの執刀医が患部を切除するのと同じく、プロの行者として役割を果たす当然の行為である。

 当山では、犬や猫や鳥などのご葬儀も行う。
 お大師様が、お釈迦様と同じく(あまりに当然だが)、輪廻転生(リンネテンショウ)は生きものの世界全体で絶え間なく続いているシステムであると説かれたからである。
 人間のいのちは、人間以外の生きものたちのいのちをもらってこそ保てる。
 当山のネコたちとは、目の動きや声色などで会話ができる。
 いのちと心の世界に境界はない。
 だから、輪廻転生が人間界に限定されないのは当然である。
 ペット供養は「あなたは家族、あなたは友~」という呼びかけから始まる。

 最近、河北新報に「21世紀の空海」が連載されている。
 作家高村薫氏は、何の変哲もなさそうな文章に恐ろしい刃を潜ませている。
 第4回からの抜粋である。

「彼ら(※高僧たち)は、空海がいまも生きて修行を続けているという『入定留身(ニュウジョウルシン)』が、後世の創作であることに言及するのをはばかったりはしないし、そこから生まれた大師信仰と空海が体系化した真言密教が厳密には別ものであることを否定もしない。
 またさらに、空海が到達した大日如来との入我我入(ニュウガガニュウ…一体になること)の境地が凡夫には成し難いものであることや、仮に到達しても客観的には検証不能な身体体験であることなど、真言密教の修行面での難しさも、彼らは一様に認めるのである。
 しかし、その一方で、それでもいいのだと彼らは言う。
 そうして大衆の大師信仰と、真言密教との乖離をやんわりと押し包んでみせるのだ。」

「緋色の法衣に身を包んだ山内住職が練り歩く壮麗な行列のさなか、のどかに私語を交わしていたりするのだから、ほんの少し緩くもある。」

 どこか遠くの世界で起こっているできごととしか感じられない。
 お大師様の肉体が物理的にどうなっていようと、お大師様が、お言葉どおり、弥勒菩薩(ミロクボサツ)の浄土から我が身を観ておられるという確信なくしては、真言密教の行者たり得ない。
 大師信仰に立った修法をもって、お大師様がまとめられた壮大な体系を体現することにしか真言密教行者としての使命はなく、壮大な宗教体系という機械は、信仰という燃料なくしては動かない。
 そして、機械が動き、救われることは目に見えない世界のできごとであり、宗教的真実の「客観的な検証」などは、リンゴの味を絵で示せというようなトンチンカンな話である。
 当山のご葬儀に参加された方々が、「安心しました」「救われました」「驚きました」「得がたい体験をしました」「こうしたご葬儀もあるのですね」と感じ、確かな宗教体験を得られれば、リンゴの味は生き、宗教は存在理由と存在価値を保たれる。
 また、宗教行為は刃の上を渡るものであり、少なくとも当山において、修法中の私語はあり得ない。
 当山の存在理由は、行者が大師信仰の信者としてお大師様とご本尊様を信じ、行者として伝授された修法を己の存在をかけて行い、ご縁の依頼者に〈結果〉を感じていただくところにしかない。

 行者にとって、死者と通じ、ペットなどとも通じるのは当然だが、行者でない方々も、経典を読んだり真言を唱えたりして心を澄ませば、そうした実感を持てる場面があるはずだ。
 その時、誰もが〈み仏の子〉そのものになりかけている。
 お大師様が説かれた即身成仏(ソクシンジョウブツ…この身このままでみ仏に成ること)の世界は扉を開きかけている。
 何も〈乖離〉の心配などする必要はないのである。

 今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。合掌

この記事を書いたプロ

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