コラム

 公開日: 2014-05-05  最終更新日: 2014-06-04

爪を立てて欲張る心に平安は訪れない ─「ダライ・ラマ『死の謎』を説く」を読む(31)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈5月4日早朝、例年通り、中山平温泉『琢秀』さんの水子地蔵様をご供養しました〉

 平成6年、ジャーナリスト大谷幸三氏は、インドのダラムサラにおいて、ダライ・ラマ法王への質問を数日間かけて行い、回答をまとめた。
 それがテキスト「ダライ・ラマ『死の謎』を説く」である。

第5章 欲望について ―快楽と至福の喜びはどう違うのか

2 相互依存の精神

○外的な価値を信じる者は、破滅の道を辿る

「人間は、往々にして外的な価値を信じる。
 人生の回答を金に求める。
 あるいは、力に求める。
 その結果、人間は破滅へと到達する。」

 ダライ・ラマ法王は、財物や地位や名誉そのものを求める人生は必ず破滅すると説く。
 
「外的な価値を追求すれば、その必然的に至るところは破滅でしかない。
 権力欲と金にまみれて転落してゆく多くの国の政治家を例に挙げる必要もないほど、これは自明のことである。」

 世界中の権力者たちが哀れな末路を披露し続けている。
 庶民は正義の実現に快哉を叫びつつ、うっぷん晴らしも行い、自分たちにも潜む物欲や名誉欲が異様に膨張し破裂するさまを目にして驚き、あきれる。
 それでもなお、自分の欲望を深刻に省みはしない。
 大したことはない、とたかをくくって生きている。

「名声を惜しみ、地位を惜しみ、それでもなお、人は自己の欲望を抑えるのにいかに苦労するかという実例は、いくらでもある。
 未来を見通すことができず、自己の欲望を統御できず、欲望を満たすことが本物の内的な欲求であると勘違いしたものは必ず破滅する。
 政治家だけではない。
 ラマ僧であろうと、禅の高僧であろうとも、この道筋を破滅へと辿るものは少なくない。」

 今、中国でも韓国でも政府要人たちに対する国民の目は厳しくなってきている。
 平成26年2月5日、新聞各紙は、国連の『子供の権利委員会』が、「世界各地でのカトリック聖職者による未成年者への性的虐待問題に関する報告書を公表し、ローマ法王庁(バチカン)の対応は不十分と厳しく非難した上、関与した聖職者の即時解任や司法の捜査を求めた」と報じた。

○快楽の誘惑は。至福の生命への障害となる

「社会の一員として生きながら孤立していると感じたり、多くの人々とともに暮らしながら孤独を覚える若者が増えている。
 それが原因で、現代、若者は自らの欲望に充足だけに走りがちであると言われる。
 特に欧米、日本などの豊かな国々の若者たちに、金とセックスに溺れるものたちが増えている。
 彼らにとって、よりよい道、自らの人生を生きるよりよい方法はあるのだろうか。」

 モノ金に恵まれた「欧米、日本などの豊かな国々」でこそ、「金とセックスに溺れるものたちが増えている」とは、悲しい現実である。
 人は〈食うに困らなくなった〉時、何をするのかという哀れな実態が見えているのは情けない。

「常にそうだが、過ちを見出すことは何の造作もないのだが、その正しい回答を得ることはひじょうに難しい。」

 財欲(モノ金が欲しい)・色欲(異性と交わりたい)・食欲(うまいものをたらふく食べたい)・名欲(有名になりたい)・睡眠欲(思いっきり眠りたい)という五欲によって次々と過ちが引き起こされている。
 しかし、私たちにとって五欲はもはや空気のような存在なので、過ちを処理し再発を防ぐための「正しい回答」はなかなか見つからない。

「今日、なぜ若者たちがそのようになりがちなのか。
 もちろん、いくつもの原因、因子が求められる。
 彼らは、大都市で生きるとき、四六時中、さまざまな快楽の誘惑に自らを曝して生きている。
 物質の誘惑、快楽の誘惑は、毎日、より広範囲になり、それを獲得するのにより容易くなりつつある。
 これら外的なものはある種の幸福をもたらしはするが、却って内的な世界にしか見出せない平安、至福の生命を得るには障害となる。」

 モノ金が手に入っても、それは一時的な安心や満足やを生むのみであり、もの惜しみやなくす不安や、ない人への軽蔑や高慢心なども併せて起こる。
 異性と親しくなっても、快楽を楽しむ一方で、失いたくないという執着心や心変わりへの疑念や思う通りになってくれないことへの怒りなどに悩まされもする。
 こうしたものに溺れている限り、「内的な世界にしか見出せない平安、至福の生命」は関心の外にある。
 もしくは葛藤や失望の果てに、求められずにいられないものとして意識へたち顕れる。

○家族は、若者の精神形成に重要な役割がある

「外的な要素を重視する人生のスタイルを選ばせる理由としては、まず生活環境の影響が考えられる。
 田舎に生きる若者について考えてみよう。
 彼らは、より少ない誘惑の中で生きている。
 物質的な誘惑にも快楽の誘惑にも、都市に生きるものよりは、彼らのかかわりは浅いと言えるだろう。」

 法政大学総長田中優子氏は、『鄙への想い』に書いた。

「生産共同体だからこそ、鄙と都はかつて相互依存関係にあった。
 都は鄙の生産物をさばき、流通させ、貨幣と交換する。
 鄙の技術力が高ければ高いほど、都が商品をまわす活力は強くなった。」

 田舎は生産共同体であり、個人の社会定期位置は、都会ほど浮遊的ではない。
 山でも田畑でも、短いスカートは無用である。
 山里に住む者として、目に見えぬ〈節度〉が都会よりは濃く存在している実感を持っている。
 誘惑への「かかわりは浅い」。

「次いで、家族の影響は無視できないほど大きい。
 貧しくても自分たちの暮らしに有意義な意味を見出している家族もあれば、豊かでありながらより多くの物質を求め、常に金と物とに飢えている家族もあるだろう。」

 古来言われてきた「三つ子の魂百まで」は、科学的にも事実とされつつある。
 岡潔博士はこう指摘した。

「生後3ヶ年を童心の季節と、私は言っている。
 何故そう言うかと言えば、この時期にはまだ子供には自分(自我)と言うものが無いからである。
 この時期に子供は家庭と言う環境から取って、自己の中核を作ってしまう。
 これは其の後には(宗教の力によらなければ)もう変えられないのである。
 だからこの時期の家庭は十分よくなければいけない。
 取り分け母親は子を可愛がってやらなければいけない。
 母親が職業の為に昼は子供から離れて、夜だけ十分可愛がってやるのでは足りないか、と聞かれても、ここの研究は非常に難しくて、そんな細かい点まではまだわかっていないのである。
 だから十分大事をとって、そんなことはしないようにして欲しい。」

 私たちのほとんどは、3才あたりまでの人生を記憶していない。
 しかし、そこで親が何を大切にしながら生き、いかなる心で子供を育てていたかによって、私たちの「自己の中核」がつくられる。
 ありがたくもあり、恐ろしくもある。
 世の親たちには、よくよく心していただきたい。

「だが、心すべきだ。
 貪欲は、あなたを決して平安な暮らしに導いてくれることはないことを。
 貪欲は破滅への道であることを。
 したがって、家族の絆は決定的に重要であると言わねばならない。」

 親が貪欲すなわち、「人のものを(正当な方法によらず)自らが所有したいと願う気持が強ければ、子供も貪欲になりかねず「平安な暮らし」は訪れにくい。
 そうした家庭環境ではなく、他には代えられない家族間の絆をこそ大切にする親であり、子であれば、「平安な暮らし」にきっと手が届くことだろう。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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