コラム

 公開日: 2014-05-08  最終更新日: 2014-06-04

互いのためになり合う極楽 ─「ダライ・ラマ『死の謎』を説く」を読む(32)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 平成6年、ジャーナリスト大谷幸三氏は、インドのダラムサラにおいて、ダライ・ラマ法王への質問を数日間かけて行い、回答をまとめた。
 それがテキスト「ダライ・ラマ『死の謎』を説く」である。

第5章 欲望について ―快楽と至福の喜びはどう違うのか

2 相互依存の精神

○相互依存の精神が、人類の課題解決の力になる

「仏教の相互依存の精神は、このわれわれが直面する問題を解決する大いなる力になるだろう。
 人類に対する、あるいは、地球全体に対する敬虔な姿勢がわれわれになければ、全身全霊を人類の課題解決に傾けようとする敬虔なる世界観がなければ、どのような問題も解決の糸口さえ見つからないはずだ。」

 ダライ・ラマ法王はここまで、財産や権力などの「外的な価値」に人生をかけたり、「快楽への誘惑」に引きずられたりするのは破滅への道であると説かれた。
 若者たちが、自分のために都合良く奪い取ろうとする貪欲な心をつくらぬよう、支え合う家族のぬくもりに安心を体感し、自我を育てない正しい教育を受けるべきであると訴えた。
 そのためにメディアへ「建設的な力」を発揮するよう求めた。
 至福の喜びを求める項の最後に挙げたのは、「相互依存の精神」である。
 私たちは、自分の力だけで生きているという勘違いを脱して謙虚になり、社会や自然から無限の恩恵を受けている存在として、そうしたものへの感謝や責任を持つ「敬虔なる世界観」を持たねば、自分が幸せになれないだけでなく、地球規模で起こりつつある自然環境の破壊や人口の偏り、資源の枯渇、食糧難などを克服できない。

「もちろん、これは仏教のみに当てはまることではない。
 全人類が信仰するさまざまな宗教が、こうした課題解決に対する責任を負っているのである。
 にもかかわらず、ときに信心深い人たちが、人類すべての課題に対してよりも、自己の伝統を固守することに汲々としているように見えるのは愚かしくもあり、気がかりなことである。」

 お釈迦様は縁起を説かれた。

「此(コレ)があれば彼(カレ)があり、此がなければ彼がない。
 此が生ずれば彼が生じ、此が滅すれば彼が滅す。」

 煩悩があるために苦があり、煩悩がなければ苦もない。
 煩悩が生ずるから苦が生ずるのであって、煩悩が滅すれば苦も滅する。
 真理を知らず、自己中心的な姿勢になれば煩悩が起こり、それを〈縁〉として、自分のままにならない苦が〈起〉こる。

 お大師様は六大縁起を説かれた。

「六大(ロクダイ)無礙(ムゲ…妨げない)にして常に瑜伽(ユガ…不可分)なり」

 物質世界を象徴する「地・水・火・風・空」と、精神世界を象徴する「識」との6つが互いに妨げ合うことなく一如(イチニョ)となっていることを〈縁〉として、世界が〈起〉こり、私たちが存在している。
 大地のように堅く支えとなるものや、火のように熱く気温や体温となっているものなどの徳を感じとる私たちの心と対象は切っても切り離せない。
 お塔婆は、六大の徳をすべて捧げるという究極の供養を象徴している。
 だから、必ず表面には「地・水・火・風・空」を表す梵字が書かれ、裏面には「識」を表す梵字が書かれる。
 お塔婆を捧げるのは、五輪の塔や仏像を建立することに通じている。

 このように仏教は、直接的原因としての「因」と、間接的原因としての「縁」とによって、あらゆるものが生起していると観る因縁生起(インネンショウキ)の立場なので、「相互依存」は理の当然と考えている。
 しかし、ダライ・ラマ法王は、互いに助け合わぬ限り私たちは地球上に共存できないという広い意味での「相互依存」を考えねばならないと説く。
 この視点は、「人類すべての課題に対して」取り組むあらゆる人々に不可欠である。
 もはや「自己の伝統を固守することに汲々と」してなどはいられない。

 私たちが「相互依存」的関係によって今を生かされているという真実をよく観て、互いに思いやるところにこそ「至福の喜び」はある。
 5月6日NHKテレビは「認知症の高齢者と若者ふたり歩む散歩道」を放映した。
「瀬戸内海に浮かぶ愛媛県弓削島。
 照らされたなぎから届く潮の香り、道端に続く小さな花、小鳥たちのさえずり。
 毎朝9時、丘から海へと続く一本道を日に焼けた車いすの老人と色白の若者が並んで歩いてくる。
 ふたりだけの散歩道。都会で一度つまずいた若者は島で生まれ育った認知症の老人と歩き続けるうちふるさとの包容力に気づいていく。
 過疎の島に生まれた手作りの介護施設。
 若者は働きながら一度失っていた笑顔を取り戻していく。」(NHKフェイスブックより)

 いじめからとじこもりになってしまった若者が福祉施設ではたらきだした。
 自分をたよりにする認知症のお爺さんもいるが、お爺さんの気持にはなかなかなれず、反発を買ったりもする。
 施設の責任者は、じゅんじゅんと説く。
「君は辛いところを通ってきだだろう。
 お爺さんも、年をとって身体が思うように動かせなかったり、うまく話せなかったりと、辛い思いを抱えているんだ。
 辛い思いを体験しているしている君ならきっと、お爺さんの心に寄り添えるはずだ」
 若者はお爺さんの家を訪ねて奥さんに会い、お爺さんの人生を知り、気持を知ろうと努力し、ついに、一緒に思い出をつくろうと決心する。
 以前、車椅子にお爺さんを乗せて散歩したものの、すぐに帰ってきた海岸へ再びでかけ、こんどはお爺さんが思い出を追ったり、心を和ませたりするまで長時間かけて一緒に風景を眺める。
 満開の桜もじっくりと眺める。
 帰り道、ごきげんのお爺さんは「よいしょ!よいしょ!」とたった一つしか話せなくなった言葉を叫び続ける。
 大きく口を開けた笑い顔は泣き顔にも見えた。
 車椅子を押す若者は生気に満ちている。
 泣けた。
 そして、自分にはきっとできないことをやっている若者が観音様にもお不動様にも思えた。
 若者は、認知症のお爺さんへ「至福の喜び」を与え、若者にすがるお爺さんは、ひきこもりになってしまった若者へ「至福の喜び」をもたらした。
 実に、「相互依存」の極楽である。

 今日の守本尊文殊菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=WCO8x2q3oeM



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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