コラム

 公開日: 2014-05-12  最終更新日: 2014-06-04

消費社会への警鐘 ―ウルグアイのホセ・ムヒカ大統領―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 平成24年7月22日、「国連持続可能な開発会議(Rio+20)」においてウルグアイのホセ・ムヒカ大統領は衝撃的な演説を行った。
 大統領の個人資産は1987年型フォルクスワーゲン・ビート(約18万円相当)のみ、給与の大部分を寄附し、郊外の農村から自分で運転して公務におもむく。
 一ヶ月に1000ドルほどの生活費でまかなっているという。
 以下、少々長くなるが、サイト「hana.bi」を運営するAkira Uchimura氏の翻訳を転載する。

「会場にお越しの政府や代表のみなさま、ありがとうございます。
 ここに招待いただいたブラジルとディルマ・ルセフ大統領に感謝いたします。
 私の前に、ここに立って演説した快きプレゼンテーターのみなさまにも感謝いたします。
 国を代表する者同士、人類が必要であろう国同士の決議を議決しなければならない素直な志をここで表現しているのだと思います。
 しかし、頭の中にある厳しい疑問を声に出させてください。
 午後からずっと話されていたことは持続可能な発展と世界の貧困をなくすことでした。
 私たちの本音は何なのでしょうか?
 現在の裕福な国々の発展と消費モデルを真似することでしょうか?」

 会議の終わり近くになってようやく演説の順番が巡ってきた小さな国の大統領は、現代文明に対する最も根本的な疑問を投げかけた。
 世界を席巻する国際資本によって演出された生産と消費の急速かつ無限な膨張が、はたして本当に会議の目的である「持続可能な発展と世界の貧困をなくすこと」に貢献し得るのだろうか、と問いかけたのである。

「質問をさせてください:ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てばこの惑星はどうなるのでしょうか。」
 息するための酸素がどれくらい残るのでしょうか。
 同じ質問を別の言い方ですると、西洋の富裕社会が持つ同じ傲慢な消費を世界の70億〜80億人の人ができるほどの原料がこの地球にあるのでしょうか?
 可能ですか?
 それとも別の議論をしなければならないのでしょうか?」

 先進国に追いつくのが世界から貧困をなくす方法であるなら、先進国と同じものが後進国にも遍く普及すればいいのですか、と念を押している。
 西洋と同じように豊富なモノが恵まれればそれがそれが理想社会なのか、そもそも、それだけモノを分厚く人間へもたらすほど地球は資源に満ちているのか、と問うている。

「なぜ私たちはこのような社会を作ってしまったのですか?」

 質素な国で質素な暮らしをしている大統領は、当然、無限にモノを求め、奪い合う気の遠くなるような格差社会などに理想を求めはしない。
 だから、「このような社会」(こんなに酷い社会)と言っている。

「マーケットエコノミーの子供、資本主義の子供たち、即ち私たちが間違いなくこの無限の消費と発展を求める社会を作って来たのです。
 マーケット経済がマーケット社会を造り、このグローバリゼーションが世界のあちこちまで原料を探し求める社会にしたのではないでしょうか。」

 資本が世界を股にかけて覇を競う経済システムに慣らされた私たちは、いつの間にか「無限の消費と発展を求める社会」をつくってしまった。
 自由に競争することが正しいという一つの原理に頭を占領され、「もっと、もっと」と無限に欲しがり、無限に消費を増大させる生活が営まれている。

「このような残酷な競争で成り立つ消費主義社会で『みんなの世界を良くしていこう』というような共存共栄な議論はできるのでしょうか?
 どこまでが仲間でどこからがライバルなのですか?」

 国際会議の欺瞞生を明確に指摘した演説は鮮烈極まりない。
 環境破壊、国家間や国家内の格差、文化の画一化などを生み出した資本主義、市場原理、グローバリズムを正義であるとしたままで、真の意味での「共存共栄」などはかりようがないと指摘した。
 グローバリズムの名のもとに世界規模の巨大資本が、あるいは強大な軍事力のある国家を後盾にした巨大資本が、地球上へ思いのままに富をすくいとろうと網をかぶせてしまっている現実は、きわめて「残酷な」ものであり、そこに真の意味での「仲間」はいない。
 ルールのない自由競争にあっては、自分以外すべて、「ライバル」となる。
 こうしたメカニズムと実態を問題視しないままでの「共存共栄」など、欺瞞に満ちた空論でしかない。

「このようなことを言うのはこのイベントの重要性を批判するためのものではありません。
 その逆です。
 我々の前に立つ巨大な危機問題は環境危機ではありません、
 政治的な危機問題なのです。
 現代に至っては、人類が作ったこの大きな勢力をコントロールしきれていません。
 逆に、人類がこの消費社会にコントロールされているのです。」

 大統領は、市場経済によってつくられた消費増大の社会を政治が放置していることこそ、問題であるとした。
 人間が社会をつくっているのではなく、社会のシステムに人間が翻弄され、あくせくさせられつつ猛烈なスピードで資源を消費していることに目を醒まそうと訴えた。

「私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。
 幸せになるためにこの地球にやってきたのです。
 人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。
 命よりも高価なものは存在しません。
 ハイパー消費が世界を壊しているのにも関わらず、高価な商品やライフスタイルのために人生を放り出しているのです。
 消費が社会のモーターの世界では私たちは消費をひたすら早く多くしなくてはなりません。
 消費が止まれば経済が麻痺し、経済が麻痺すれば不況のお化けがみんなの前に現れるのです。」

 現代に生まれる人間は、「発展」という名の無限「消費」が課せられているかのようだ。
 幸せがどこにあるかをじっくり考える間もなく、消費にいそしむ。
 しかし、人間がどんどんモノを消費する存在であり続けなければ破綻してしまうような経済システムは人間を幸福にしない。

「このハイパー消費を続けるためには商品の寿命を縮め、できるだけ多く売らなければなりません。
 ということは、10万時間持つ電球を作れるのに、1000時間しか持たない電球しか売ってはいけない社会にいるのです!
 そんな長く持つ電球はマーケットに良くないので作ってはいけないのです。
 人がもっと働くため、もっと売るために『使い捨ての社会』を続けなければならないのです。
 悪循環の中にいるのにお気づきでしょうか。
 これはまぎれも無く政治問題ですし、この問題を別の解決の道に私たち首脳は世界を導かなければなりません。」

 儲けることが至上命題である資本の自由に任せておけば、いかなるモノをつくるかは明白である。
 消費者が不満を持って買わなくならない程度、ほどほどのところまで長持ちし、あとは使えなくなり再び買わなければならない商品をつくる。
 そして、今まさに使っているものに不満を抱き、買い換えないではいられないような目新しい商品をつくる。
 そして現れたのが「使い捨ての社会」である。
 高度に進んだ資本主義国では、人間すらも企業に管理され「使い捨て」にされつつある。
 ここにある「悪循環」は「政治」が取り組むべき課題であり、政治以外誰も解決はできない。

「石器時代に戻れとは言っていません。
 マーケットをまたコントロールしなければならないと言っているのです。
 私の謙虚な考え方では、これは政治問題です。」

 人間がシステムをつくるはずなのに、システムに取り込まれてしまった状態は、政治が何とかせねばならない。

「昔の賢明な方々、エピクロス、セネカやアイマラ民族までこんなことを言っています。」
『貧乏なひととは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ』
 これはこの議論にとって文化的なキーポイントだと思います。」

 お釈迦様は2500年前に、はてしなく貪ることが不幸の原因であると説かれた。
 不慳貪(フケンドン)すなわち放逸に貪らないことは、苦から脱する「十善戒」の一つである。
 私たちは、喉が渇いて塩水を飲めばどうなるかを知っている。
 だから古人は「腹八分」や「足(タ)るを知る」と説いた。

「国の代表者としてリオ会議の決議や会合にそういう気持ちで参加しています。
 私のスピーチの中には耳が痛くなるような言葉がけっこうあると思いますが、みなさんには水源危機と環境危機が問題源でないことを分かってほしいのです。」
 根本的な問題は私たちが実行した社会モデルなのです。
 そして、改めて見直さなければならないのは私たちの生活スタイルだということ。」

 無限消費に駆り立てられれた「生活スタイル」のままでよいかどうか、私たちがこうした「生活スタイル」を変えないままに「水源危機と環境危機」は乗りこえられるのか?

「私は環境資源に恵まれている小さな国の代表です。
 私の国には300万人ほどの国民しかいません。
 でも、世界でもっとも美味しい1300万頭の牛が私の国にはあります。
 ヤギも800万から1000万頭ほどいます。
 私の国は食べ物の輸出国です。
 こんな小さい国なのに領土の90%が資源豊富なのです。
 私の同志である労働者たちは、8時間労働を成立させるために戦いました。
 そして今では、6時間労働を獲得した人もいます。
 しかしながら、6時間労働になった人たちは別の仕事もしており、結局は以前よりも長時間働いています。
 なぜか?
 バイク、車、などのリポ払いやローンを支払わないといけないのです。
 毎月2倍働き、ローンを払って行ったら、いつの間にか私のような老人になっているのです。
 私と同じく、幸福な人生が目の前を一瞬で過ぎてしまいます。」

 資源に恵まれたウルグアイでも、人々はローンに追われつつ年老いる。
 目の前にニンジンをぶら下げられた馬のまま走り続ける人生は幸せと言えるのか?

「そして自分にこんな質問を投げかけます:これが人類の運命なのか?
 私の言っていることはとてもシンプルなものですよ:発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。
 発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。
 愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。
 これらをもたらすべきなのです。」

 真の発展とは人間に真の幸福をもたらすものでなければならず、もたらされるべきものは無限のモノではなく、温かな心の交流と、ほどほどのモノである。

「幸福が私たちのもっとも大切なものだからです。
 環境のために戦うのであれば、人類の幸福こそが環境の一番大切な要素であるということを覚えておかなくてはなりません。」
 ありがとうございました。」

 大統領は、地球上の誰もが幸せを求めているのに、幸せとは何かが問われないまま論議を進めてはならないと訴えた。
 世界を覆う経済システムを放置する政治の責任を追及した。
 この演説は、人類が滅びない限り語り伝えられるのではないだろうか。

 そもそも、〈原理〉任せではまっとうな社会がつくれない。
 資本主義、共産主義、自由競争、さまざまな思想や宗教の原理主義、こうしたものは歴史が証明しているとおり、社会をギスギスさせ、無慈悲な空気をもたらし、やがてはのっぴきならない対立も、戦いも生みかねない。
 しかし、今、世界中で原理の徹底が叫ばれている。
 ――日本でも。
 原理にひきずられないために必要なのは叡智ではないか?
 ディルマ・ルセフ大統領は叡智の存在に目を見開かせた。
 この先、地球規模で有効な工夫ができれば、環境も人類も救われる。
 仏教では、こうした叡智を〈智慧〉と呼び、最上の手立てを〈方便〉と呼ぶ。
 仏教の理想は、〈慈悲〉という思いやりに立って〈智慧〉を磨き、〈方便〉を実践して共に苦から脱するところにある。
 私たちは、破滅が来ないうちに、お釈迦様が説かれた救済の道筋をたどれるのだろうか。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。。

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