コラム

 公開日: 2014-05-15  最終更新日: 2014-06-04

寺院がなくならない理由は?

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 よく、「コンビニの数よりもお寺の数の方が多い」と言われ、その理由は「江戸時代に檀家制度によって住民の管理をしていた名残」と指摘される。
 せいぜいが、「キリスト教徒を取り締まるという宗教弾圧が目的だった」とつけ加えられて話は終わる。
 それが真実なら、なぜ、明治時代になって社会が激変し、廃仏毀釈まで行われたのに寺院は消滅しなかったのか?
 仏の罰なんか当たらないと叫んでご本尊様を壊す役人から、なぜ、庶民はご本尊様や寺院を守り、廃仏毀釈はたった2~3年で終熄したのか?

 庶民にとっての真実は一つしかない。
 死者をあの世へ送る僧侶がいなくなっては大変だし、ご先祖様が安心できないからである。
 死という異次元の世界にかかわるプロは、導き手としてのみ仏と、死者であるご先祖様に仕える異次元の世界に住む。
 み仏と御霊へお仕えすることに全てを捧げ、白衣で半身を死の世界へ置いている僧侶は、娑婆での収入を求められない。
 だから娑婆の人々はご先祖様の安寧を頼み、いざという時に安心してあの世へ旅立てるよう、檀家となって寺院と僧侶を支え、ご本尊様を守ってきた。

 さて、核家族化が進み、お墓に対する考え方も変わり、檀家が少なくなった寺院は足元が揺らいでいると言われている。
 5月14日にNHKの「クローズアップ現代」に登場した臨済宗の方は、同宗に属する宗教法人の3割ほどが実態をなくしているのではないかと指摘した。
 一人で十か寺の住職を兼務している例もあるという。
 事態を重く見た臨済宗の宗務庁は、法人の悪用を防ぎ檀家の迷惑などをなくすよう、専従チームをつくり宗派を挙げて法人の整理に取り組み始めている。

 さて、保田與重郎は『神話と日本人の心』に書いた。

「日本人が死を忌んだといふのは、素朴な未開人的心理のタブーのやうなものではなかった。
 日本の祭祀の実相は、生産生活そのものであり、それは生活の法則がそのまま道徳であるやうなくらしであった。
 このことは日本の農村にも残ってゐる宮廷のしきたりによく出てゐる。
 死の穢れにふれたものは、祭祀にあづかることが出来ないといふ原則があった。
 そして死者の葬(ハフ)りを僧侶にゆだねた。
 僧侶が葬をあつかひ、死者の追善をひきうけてくれたので、常民は日常の生活に専念できる。
 この日常の生活とは、原初原則の考へ方では生産の生活であつて、もっと素朴な根源をいふと、米をつくる農業だった。」

 ここには、現代に通じる真実が述べられている。
「僧侶が葬をあつかひ、死者の追善をひきうけ」るから、僧侶でない方々は日常生活において、それぞれがやるべきことに専念できる。
 ご供養などをきちんと行う方ほど、こうした言葉を口にされる。
「いつも、お任せしたままで申しわけありません」
 お応えする。
「ご信頼いただけるのはありがたいことです。
 どうぞご安心してお励みください」
 浮つかず地に足のついた〈生〉の営みに励む人は、〈死〉や〈死者〉への意識が伴った日常を送る。

 むろん、僧侶は死者の弔いをもっぱらとしてきたのではない。
 日常的な〈生〉だけではない世界の空気を吸いながら生きている者として、寺子屋を開き、死へ引っぱられる人の求めに応じて修法し、生まれた子供の名前を考え、人偈関係に追いつめられた人へ安心を与えたりもしてきた。
 それらはすべて、僧侶でなければ行えない葬のプロとして認められればこそのことだった。
 当山で寺院の存在理由とする「この世の幸せのために」は、もう一つの存在理由「あの世の安心のために」が土台にある。
 だから、当山の人生相談では、人間関係をうまくやるためのマニュアルやカウンセリングの技術といったものを用いない。
 袈裟衣をまとい、ご本尊様と一体になった法を結び、その場へ結界を張り、無常と共に歩み、死と隣り合わせに生きている者同士としての対話を行う。
 ご来山されるのは、単純に前を見ましょう、視線を上げましょうというだけでは生きられなくなった方々である。
 無常をはらんだ世界で無常を感じ、そこから徐々に目線が上がれば、明日からの足どりは確かなものになる。
 
 さまざまな方々が寺院や仏教や葬儀などに関し、いろいろと〈この先〉について語られる。
 日々、白衣をまとい現場に生きるプロとしては、死ぬまでプロとしての力を磨き続けるのみである。
 それが必要とされるかどうかは、実際に〈その場〉に立たれた方々の判断へお任せするしかない。
 一介の行者は、生者と死者とを問わず、必要とされる方の「この世の幸せとあの世の安心のために」生きるだけのことである。
 
 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。/

この記事を書いたプロ

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