コラム

 公開日: 2014-05-26  最終更新日: 2014-06-04

原理も智慧も ―神がひとさじ、儒仏半さじづつ―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈ご縁の方々が、当山で摘んだ草によって草餅を作られました〉

 このところ、当山は、現代の日本を動かす最も大きな力に反することをいろいろと書いている。
 たとえば原発の推進、あるいはグローバリズム、あるいは成長至上主義、あるいは清潔主義などについて一孝をうながしている。
 こうしたことごとは、二つの視点から行われている。
 一つは、原理主義への懐疑であり、もう一つは、人間そのものへもっと近づこうとの思いである。

○原理主義への懐疑

 私たちは、いつの時代かに、男女のいずれかとして、どこかの国の、貧しい、あるいは裕福な、あるいはそこそこの生活をしている家に、何番目かの子供として生まれ、誰かと出会い、どこかで生き、そして死ぬ。
 まことに時間的、空間的に限定された存在である。
 また、いかに世界を股にかけて飛び回ろうと、もしくは生涯を家業や一専門職にかけて過ごそうが、たかだか数十年の間にささやかな体験をするだけである。
 まことに知ることの些少な存在である。
 こうした私たちは、いつの時代も、さまざまな〈普遍〉的〈原理〉に気づき、〈普遍〉的と思われる思想や宗教も登場する。
 それを信じて生きる。
 とても愛おしいではないか。

 しかし、そうした原理のほとんどは数百年ももたぬうちに、その限定性や錯誤などが明らかになり、時代を率いる力を失い、やがて過去のものとして忘れ去られる。
 もちろん、数千年も生き残る宗教もいくつかあるが、よく観ると、普遍的であると思い込んでいるかなりの部分が実に限定的であり、個別的である。
 よく、「森の思想」や「砂漠の思想」などとして比較されるとおり、いかなるものにも必ず出自があり、特定された時間的空間的特殊性を離れては出現できない。

「~やや単純化した言い方になるが、ユダヤ・キリスト教の世界観は、砂漠ないしそれに類する環境において、基本的に人間が自然と対立的な関係にあり、――砂漠において〝自然と一体になる〟ことは死を意味する――、したがって人間と自然の間に明確な一線が引かれ、その上で『超越的な人格神―人間―自然」というピラミッド的構造が観念される~」
「~降水量に恵まれ、森林におおわれているような環境においては、むしろ人間を包み込むような自然=生命=宇宙といった観念が生まれ、自然や宇宙との一体性を志向するような、異なる自然観や世界観が形成されるだろう~」(広井良典著『人口減少社会という希望』より)
 
 だから、残念ながら、いかに〈普遍〉と思われるものであれ、いつの時代のどこにあっても〈一番〉であり、それに従ってさえいれば自分も社会もこの世も大丈夫、などという万能性は期待できないと考えるべきではなかろうか。
 原理は多様な立場や思考を横断してはたらく〈よりどころ〉としての強大な力を持つが、その原理と似たレベルの異なる原理を前にした時、〈よりどころ〉は往々にして相手を打ち負かさないではいられない〈武器〉となる。
 人間がよってたつものが、人間を戦わせかねないのである。

 原理を過たずに用いる賢者の叡智は、ここで必要となる。
 叡智は、もしかすると、原理の前進力を削ぐかも知れない。
 しかし、自他が血を流さないで一歩前進できる道を示す可能性がある。
 これまで何度か書いたが、かつて、自民党の総務会は全会一致で次のステップへと進んだ。
 いわゆる「うるさ型」や「猛者(モサ)」と称された人々が何時間も何日間も、あるいは何ヶ月もかけて徹底的に議論し、裏では派閥の親分たちが妥協点を探るやりとりをし、党としてこれで行こうと決着したならば、あとはきまりに従い、党は粛々と政策を実行できた。
 もちろん、総務会の歴史がすべて肯定されるべきであるかどうかはわからないし、多々、問題もあったろうが、原理と叡智がそれぞれ生きたシステムであったことは確かだろう。
 しかし、小泉内閣の時代に全会一致が多数決となり、叡智に支えられた文化が一つ消滅した。
 以後、原理が暴走の様相を深めているのは、自民党内だけでなく、日本全体の姿に思える。

 お釈迦様は、およそ人間の考え得る思考原理はほとんどが登場していたとされる時代に、私たちの生き方は畢竟、二つの方向に分けられると喝破した。
 一つは、徹底的に自己を抑圧して清浄たらんとする禁欲主義であり、その典型は過酷な修行生活である。
 もう一つは、徹底的に自己を解放して愉楽を求める快楽主義であり、その典型は放逸の暮らしである。
 そして、自己を正しくコントロールすることにより真の解放をめざす中道(チュウドウ)を説かれた。
 仏道は時代と共に深められ、現代では、龍樹菩薩(リュウジュ)菩薩が説かれた世俗諦(セゾクタイ)と勝義諦(ショウギタイ)を基礎的考え方としている。
 おおまかに言えば、手に取れるモノの確かさに発する真実の生き方もあり、モノは空(クウ)であるという観想に立った真実の生き方もあるということである。
 仏教は、いつの時代も真実を観て、安易に極論へ走らない姿勢で発展してきた。

 こんなバックボーンに立ち、当山は、〈原理〉へ柔軟な目を向け、歴史に磨かれた叡智を尊ぶことがとても大切であろうと考えている。
 ちなみに、『人口減少社会という希望』は、江戸時代まで日本人を支えてきた「精神的なよりどころ」をこう説く。

「●神道…「自然」や「神々」の領域に関わり、
 ●仏教…「精神」ないし「こころ」の領域に関わり、
 ●儒教…社会規範や倫理の領域に関わる」

 そして、二宮尊徳の有名な言葉を紹介する。

「神がひとさじ、儒仏半さじづつ」

 日本人の生き方は、神道が半分、儒教と仏道が4分の1づつといった案配でちょうどバランスがとれるのではないかというのである。
 聖徳太子もお大師様も、この三つを尊び、すべてを学ぶように指導した。
 原理に走り出している日本の空気に違和感を感じられる方は、原理と叡智について、あるいは、あらためて神道、仏教、儒教を全体的に考えてみられてはいかがかだろうか。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
Q&A
セミナー・イベント
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
村上春樹氏の「影と生きる」に想う ─影が反逆し始めた世界─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

自衛隊員の本音 ─出征する覚悟、辞める無念─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 不戦堂建立への道 ]

12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ