コラム

 公開日: 2014-05-27  最終更新日: 2014-06-04

『童子教』と「国益」について ―人倫を大切にする人と国家―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 5月26日、機関誌『法楽』を作るために足を運んでくださった善男善女と一緒に読んだ『童子教』の一節である。

「人倫(ジンリン)礼(レイ)有れば
 朝廷に必ず法在り
 人として礼無きは  
 衆中(シュウチュウ)又過(アヤマ)ち有り」

 三年前は、以下のとおり意訳し、ブログ「想いの記」と機関誌『法楽』へ書いた。

「人間一人一人が礼儀を大切にすれば、
 政府も必ず法に則して政治を行う。
 人間から礼儀がなくなったなら、
 社会は過ちに満ちる」

 今回は、こう読んでみた。

「個人個人が人倫を大切にして生きれば、
 社会もまた、人倫が生きる政治によって動かされる。
 個人個人が人間を尊ばなくなれば、
 そうした人間によって行われ社会を動かす政治にもまた、過ちが伴う」

 第二次世界大戦が終わって半世紀あまりが経過した今、世界中のあちこちで紛争と戦闘、そして戦争も増加しているように思える。
 そうした国々の指導者にとって、自らの立場を擁護する絶対的な共通語が一つある。
 それは「国益」である。
 特に国際的な緊張を生じさせる国々では、国内へ向かって「国益」を叫ぶことが最も政権の安定に寄与すると信じられているかのようである。
 外へ向かって発信する論理はたった一つである。
 どこの国も等しく国益を主張する、わが国もそうである、何か文句があるか。
 そして、経済力と軍事力で国益を増やそうとする。

 そもそも、国益とは何だろうか?
 国家的利益だろう。
 ――それも主張する国だけにとっての。
 人間にあてはめてみれば、自分だけの利益である。
 自分だけの利益を求めると声高に主張しながらカネと暴力にモノを言わせ、肩をいからせれば、普通は、ならず者と見なされる。
 いかに自分が代表する家や組織から支持され称賛されようと、社会的には困り者であり、厄介者でしかなく、決して賢者とは見なされず、人徳によるリーダーシップも期待されない。
 もちろん、子供たちにとって反面教師ではあっても、理想的人間像ではあり得ない。

 こうした利己主義が、国際政治の場では誰も批判し得ない思想として前提にされている。
 表面的には何やかやと議論しているようでも、実態は国益のぶつかり合いであると誰もが考えているはずだ?
 結局はそれを勝ち取った者が国内的に称賛され、権力を維持し、勝ち取れない者は表舞台から消えて行く。
 個人対個人では明らかに〈いかがなものか〉と思われる姿勢が、国際的に普ねく認められているのは、どう考えてもおかしい。
 前掲の『童子教』における人間と社会の関係を、国家と世界に置き換えてみればすぐにわかる。
 他国を大切にする姿勢のない国々だらけになれば、どうして地球に真の平和がもたらされようか。
 人間らしい生き方のできない人々を救う国際協調や、地球規模の環境対策などがどうしてできようか。

 さて、脱原発を進めるドイツでは、電気料金が2倍になったという。
 国外へ脱出する企業もある。
 そして、ドイツの周辺では、原発推進を国策ととし、ドイツ企業の誘致によって国力を増そうという国々が現れている。
 それでもドイツは揺るがない。
 そもそもドイツが脱原発へ舵を切る際に決定的役割を果たしたのが諮問機関「倫理委員会」であり、17人の委員の中に原子力の研究者が一人もいなかったことは特筆すべきである。
 ここには、いかなるエネルギーによって社会を維持発展させるかは科学者でなく、社会と消費者が決めるべきだという明白な決断がある。
 道具そのものの威力ではなく、道具を用いる人間と社会に主体性を持たせている。
 そして、「〈倫理〉委員会」は原発容認と反対がほぼ半々の人選でスタートし、真摯な議論の末に「いつかは廃止」で一致した。
 事故が起こった際の影響が世界へ及ぶリスクの大きさと、放射性廃棄物を後代へ残すことが決して克服されない課題であると見極めた。
 そして、原子力は「倫理的ではないエネルギー」であるとの結論に至ったのである。
 経済力と軍事力ではなく、人倫を旗印に掲げ、目先の国益の彼方に子孫と世界と地球の姿を見すえる人々と国家は尊敬に値する。
 ドイツには、ナチス政権がおこなった強制労働による被害者へ補償をし続け、7年前に補償事業という使命を終えた財団『記憶・責任・未来』がある。
 同財団は、今でも「未来」に関する事業として人種差別などと戦っており、そこには約6500社ものドイツ企業が出資している。

 人として人倫を大切にし、いたずらに国益を叫ばない国家に暮らしたいものである。
 このことが江戸時代の寺子屋で説かれていたことを肝に銘じておきたい。
 
 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。/

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