コラム

 公開日: 2014-05-29  最終更新日: 2014-06-04

ダライ・ラマ法王の時間論 過去・現在・未来 ─「ダライ・ラマ『死の謎』を説く」を読む(35)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






〈『法楽の会』会員の方々など善男善女の願いをこめた護摩法を今月も行いました〉

 平成6年、ジャーナリスト大谷幸三氏は、インドのダラムサラにおいて、ダライ・ラマ法王への質問を数日間かけて行い、回答をまとめた。
 それがテキスト「ダライ・ラマ『死の謎』を説く」である。

第6章 宇宙の法則 ―大宇宙の真実が語りかけるもの―

1 時間の概念

○「現在」は、無限のかなたへ遠ざかる

「地球そのものの始まりについて述べる人たちがいる。
 何億年、何十億年という時間について。
 一切が空ならば、いったい時間とは何か。
 それそのものが自立した、独立した概念の時間など、そもそも存在しない。」

 それそのものとして単独で存在する時間はないという。
 常識からすればなかなか理解し難いが、順を追って読めば真意がわかる。。
 
「さわれわは往々にして、自然現象と時間の本質的な関係について語ったりする。
 それは、時間の概念などないということを無視しているからである。
 時間そのもの、独立した時間という概念を、他の概念から切り離して捉える方法など、存在するわけがないのである。」

 時間は、〈何ものか〉の〈経過〉としてしか、現実には現れ得ない。
 独立し、勝手に動く時間はどこにもない。

「すくなくとも何らかの基盤の設定なしには時間というものは成り立たない。
 時間とは、過去であり、現在であり、未来だと言う。
 だが、我々は現在という架空の時間を設定し、そこから便宜的に未来へ進み、あるいは過去へと遡行して、数えはじめることによって時間を使いうるにすぎない。」

 時間は、今があり、過去があったはずであり、未来はやってくるだろうという形の中でのみ立ち現れる。
 たとえば、お年寄りが、たった今、お昼ご飯を食べ終わり、薬を飲もうとする。
 あれ、今朝は飲んだかな、と不安になって開けた薬袋から確かに一個、錠剤が減っているし、よく思い出してみると、確かに、味噌汁と一緒に飲んだような気がする。
 また、薬は二日分しか残っていないから、明日にでもお医者さんへ行こうと考える。
 過去そのものはもう、どこにもないが、過去があったはずだと今、考えられるだけである。
 もちろん、まだ来ていない未来はどこにもないし、そもそも、自分が明日、生きていられるかどうかすら誰も約束してはくれないので、未来も又、来るはずだと今、考えられるのみである。

「われわれが過去というとき、ある特定の限定された現在という瞬間に立って、すでに過ぎ去った時間を意味する。
 また、同じく特定の限定された現在に立って、未だ訪れていない時間を未来と呼ぶ。
 このことからわかるように、現在を固定しないかぎり、未来も過去もありえない。
 この特定の限定された現在こそが、時間の中心軸になる。」

 お昼の食事が終わり薬を飲もうとしている〈現在〉という瞬間に立ってこそ、薬を飲んだ記憶の中に〈過去〉を感じ、夕食後にまた薬を飲もうと予定するところに〈未来〉の到来が期待される。
 あくまでも〈現在〉があればこそ、現在、過去も未来も考えられる。
 1600年ほど前、アウグスティヌスは『告白』に記した。

「過去と未来は精神的構造物なので、〝現在の窓〟を通してしか見ることができない」

「では、現象論的に検討しよう。
 私がここで今『現在』と言ったとしても、その現在は、すでに私が『現在』と言い終わった瞬間には、過去になっているわけである。」

 過去と未来がたち現れるための基盤である「現在」そのものを考えてみると、基盤と言えないほどあやふやである。
 たとえば、こんな電話はどうだろう。
「ありがとう。
 せっかく誘ってもらったけど、私、今、遅い朝ご飯食べ終わったところだから、ごめんね」
 今と言っているが、お昼ご飯を誘う電話に出ている時点ではすでに、食べ終わった瞬間が属しているのは過去である。
 もちろん、食べ終わった状態は今も継続しているが、ここでは明らかに「さっき」と過去形で示すべき内容を「今」と言っている。
 私たちは無意識のうちに、「今」と言いつつ現在を過去へと流し、流れて行ったばかりの過去をまだ「今」と表現する。
 そして、文字どおりの「たった今」という瞬間は本当に「今」と言えるのだろうか?

「また、細部に立ち入れば、より明確になってくる。
 われわれは現在二十世紀にいる、と言うことができる。
 より限定すれば、1993年である。
 もっと限定しよう。
 現在は7月29日である。
 では、もっと詳しく述べれば、午後2時ごろだ。
 それも、インド時間の午後2時ごろである。
 午後2時ごろを正確に言い表すことができるはずだ。
 1時間は60分あるから、分の単位を使えばいい。
 まだまだ厳密に言えるはずだ。」

 これは、大谷幸三氏のインタビューを受けている時点のことである。
 法王は「今=現在」を厳密に限定しようとしている。

「秒もある。
 秒といえども細かく割ることができる。
 無限に限定の区分を小さくできるなら、では『現在』とは無限のかなたへと遠ざかる。
 捉えることができないのである。」

 こうして考えてみると「現在」はつかみようがない。
 時計の秒針を見つめながら、今と口早に言ってみたところで、秒針の動きが1秒に1目盛りなら、1秒の〈長さ〉を持つ時間は、今という〈瞬間〉であると言えるだろうか?

「すでにわかったはずだ。
 すべての時間は過去と未来に賊していることが。
 それら過去と未来は現在があってこそ存在しうるなら、いったい時間とは何か。
 要するに、時間によって存在する基準そのものが確たるものではありえない、ということだ。」

 どうしても「現在」はつかめず、私たちにとって〈長さ〉を持つ時間は、過去と未来の間にしかない。
 しかし一方で、過去も、未来も、現在という基盤からしかたち現れようがない。
 だから、法王は冒頭に言われた。
「それそのものが自立した、独立した概念の時間など、そもそも存在しない。」

 余談だが、私は子供の頃、遠足が待ち遠しかった。
 たった2日なのに、てるてる坊主を下げたりしながらも、実に長かった。
 一方で、テストの日はすぐにやってきた。
 遊びの間に詰め込みをやる2日はあっという間に過ぎ、慌ただしくテストに臨んだ。
 また、好きな人と会う約束の日はなかなかこなかった。
 カレンダーも時計も、意地悪くゆっくりと進んだ。
 それなのに、会っている時間は無情なまでに速かった。
 あの日々、あの時間は、本当に同じ長さだったのだろうか……。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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