コラム

 公開日: 2014-05-31  最終更新日: 2014-06-04

虎へも通じるよき心 ―寺子屋の教え『実語教・童子教』を考える(その72)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈あまりにも健気で〉

 江戸時代まで寺子屋などの教材となっていた『実語教・童子教』を読んでいます。
 今回は、親孝行の心が虎に通じたお話です。

○楊威(ヨウイ)の故事

 これは、中国の『忠孝圖賛(チュウコウズサン)』にあるお話です。

 楊威(ヨウイ)は若い頃、山中での狩猟をなりわいとしていました。
 ある時、虎が現れて楊威を襲おうとしました。
 楊威が「もし私が君に喰われてしまったら、孝養を尽くしている老いた母はどうなってしまうことだろう」と強く嘆いたところ、虎はたちまち退散しました。

「楊威(ヨウイ)は独(ヒト)りの母を念(オモ)つて
 虎の前に啼(ナ)きしかば害を免(マヌガ)る」

 虎は20世紀の初めまでアジアに広く分布していましたが、今は当時の1割ほどにまで減少し、極東ロシアとアジアの南部に棲息しているものも、絶滅の危機に瀕しています。
 虎は自分の生活圏における王であり、古来、最も強い生きものとして、龍と共に「龍虎」と称されてきました。
 特に中国では、猛獣と怖れられていながら、絵画などの題材としても身近な存在でした。
 こうした虎へ人間の嘆きが通じたというのです。

 虎と人間とのやりとりで有名なのが、捨身飼虎(シャシンシコ)すなわち「身を捨てて虎を飼う」お釈迦様の前世物語です。
 王の三男として生まれた摩訶薩埵(マカサッタ)は遊んだ帰りに、兄たちと竹林で休息をとっていました。
 兄たちはそれぞれ、怖がったり、淋しがったりしていましたが、摩訶薩埵だけは、静かで気持がいいと感じていました。
 やがて、出産から7日ほどしか経っていないのに7匹の子供を抱えたまま餌にありつけず、餓死寸前となった虎の母親に出会います。
 兄たちはそれぞれ、我が身は捨て難い、誰かが大きな慈悲心を起こせば身を捧げることもできようが、などと言いながら立ち去ろうとします。
 摩訶薩埵は、「私は過去世にも捨身をしてきたがあまり有意義ではなかった。今こそ、飢えた虎へ身を捧げて悟りを求めよう」と兄たちの反対を制して裸になり、虎の前に横たわりました。
 しかし、虎たちは、その慈悲心にうたれて食いつけませんでした。
 摩訶薩埵は、衰弱した虎に元気な自分へ食いつく力がないせいだと考え、竹で首を突き、血が流れる状態となったまま高地から身を投げました。
 この時、天地は六種に震動し、日光は隠され、天から妙なる香りが降りそそぎました。
 虎たちはようやく血をなめ、屍体を食べ、骨だけを残したとされています。

 ここでも、人間の強い心が虎を怯(ヒル)ませています。

 かつて、動物と人間同様に接し、「動物王国」をつくった畑正憲さんが活躍していた頃、猛獣たちとも怖れずにつき合う姿は驚異的でした。
 君を警戒したり疑ったりしてはいないよ、信頼し親愛の情を持っているよ。
 こんなシグナルが相手に届いているのだろうとしか思えませんでした。
 畑正憲さんは言っています。
「もしも猛獣が腕に噛みついたならば、引っぱってはならない。
 食いちぎられるから。
 むしろ、喉の奧へ突っこめばよい。
 苦しくて吐き出すから」
 普通の人は、こんな覚悟をしてまで猛獣と仲良くなろうとは思わないでしょう。
 畑正憲さんの「通じる」という信念には脱帽です。
 
 それにしても、私たちの〈よき心〉が猛獣にすら通じるというこうしたお話には、奮い立たせられます。
 動物へ通じるのに、どうして人間へ通じないことがあり得ましょうか。
 故事に教えられ、動物に教えられて、私たちは生きとし生けるものたちに通じる〈共通の発信器と受信機〉を持っているみ仏の子であると信じ、まっすぐに進みたいものです。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。。

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