コラム

 公開日: 2014-06-06 

刀と荷車 ―人生を〈盛ん〉にし、〈快く〉する方法─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



〈夜のコンビニで何を想うのか〉

 お大師様は説かれた。

「鈍い刀で硬い骨を切るためには、必ず砥石で磨かれている必要があり、重い車が軽快に走るためには、油がきちんとさされていなければならない。」

 このように、心のない鉄や木ですら、何かの助けのおかげではたらけるのだから、人間はなおいっそう、きちんと生きられるように導く教えのおかげによらねばならない。
 作られた刀は放っておかれれば錆びてしまい、役に立つには、どうしても砥石の手を借りねばならない。
 荷車も作られたままでは滑らかに走れず、役に立つには、どうしても、適切に油がさされていなければならない。
 人間だけが、生まれたままでまっとうに生きられるなどということはあり得ない。
 何かを縁として心を磨かねばならない。

 しかし、私たちは往々にしてこの真実を忘れる。
 それは、市場原理の信仰という特定のイデオロギーに洗脳されているからである。
「自己実現こそが生きる意味である。
 それをもたらすのは自己決定であり、自己責任が伴う」

 実現したい自己とは何か?
 パソコンや車やバッグや家などを手にすれば、そこに自己は実現されているのか?
 そもそも、私たちがはたらこうとした時、いかに〈自己決定〉できようか?
 希望する職場を得られる確率はいったい、どれほどなのか?
 いっぽう、自己責任だけは確かに負わされる。
 ノルマを達成できなければ簡単に職を失う。
 だから、マニュアルにすがる。
 マニュアルには何が書いてあるか。
 多くが、経営者にとって都合のよい労働者となる方法ではないだろうか?
 あるいは、市場原理、グローバリズムという形で観念された世界を上手に泳ぐ方法であろう。
 しかし、少し考えてみればすぐにわかることだが、この情報化社会にあって、誰もが少数の〈勝ち組(嫌な言葉である)〉になるための確かな方法などありはしない。
 皆が競って手に入れた誰にも負けないほど切れる刀を持って戦い、皆が勝者になることがどうしてあり得ようか。

 大切なのは、自分を社会に合わせた便利な道具に仕立てようと慌てることではなく、まず、本当に〈自分の目〉で自分と社会を観ることではなかろうか。
 遙かな過去からの因縁によって父母のもとに生まれ、育てられ、生かされてきた自分。
 自分を生かしてくれている人間関係。
 そして、自分をつつむ社会、世界、自然。
 これらをきちんと〈自分の目〉で観ることは、たやすくない。
 心の目はたくさんの薄膜で覆われているからである。
 成長神話、消費経済、グローバリズム、市場原理、あるいは自己中心や諦めなど。

 お大師様の時代も、薄膜を取り去ることは難しかった。
 お大師様は古人の言葉「上智は教えられず、下愚は移らず」を示している。
 智慧に優れている人々はそもそも、天賦の才があるので何かの教えを待つほどのこともないし、智慧が無く愚かな人々へは教えがなかなか伝わらないと言われていたのである。
 お大師様は、この言葉へ続けるように、冒頭の言葉を述べた。
 いかに優秀な人であろうと、優秀でない人であろうと、人は必ず導きとなるものに学び、心を磨かねばならないと説かれた。
 このステップがなければ、自分は何者であるか、この世はいかなるものであるかがつかめず、どう生きたらよいかもわからない。
 そして、心の目が開けば人生は〈盛ん〉になり、〈快く〉なるとされた。
 本当に活き活きした人生を送れるのである。
 人間が磨かれた刀のようになり、油がさされた荷車のようになるとは、交換のきく歯車の一つになることではない。
 自分なりの工夫をして生活に意義を見出し、生かしてくれている人々や世間や社会や自然へ見返りを求めずに役立つことである。
 み仏の教えを学び、実践してみれば自然にそうなる。
 人生は〈盛ん〉になり、〈快く〉なるのである。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。。

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