コラム

 公開日: 2014-06-10 

寺子屋の教え『実語教・童子教』を考える(その74)─神通力も閻魔様にはかなわなかった話―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 江戸時代まで寺子屋などの教材となっていた『実語教・童子教』を読んでいます。
 今回は、生老病死(ショウロウビョウシ)が免れられない宿命であることを説いたお話です。

○神通力を持った行者たち

 これは、月使(ゲッシ)の国すなわち天竺(テンジク…インド)のバラモン行者が閻魔(エンマ)大王に負けたお話です。

 梵士(ボンジ…バラモン教を信じる行者)四人のお話が『法句譬喩経(ホックヒユキョウ)』にあります。
 彼らは五通という超能力を持つほどの行者でした。
 五通とは、即座にどこへでも行ける力、超人的な聴力、他人の心を読む力、自分の過去世を知る力、他人の過去世を知る力、悟ったと知る力です。
 ある日、四人は、七日後に自分たちのいのちが尽きることを知り、対応策を協議しました。
 そして衆議一決しました。
「我々の神通力は天地を覆し、太陽や月を手に取り、山を動かし、河を止めるほどなのだから、無常の鬼から逃れられるに違いない。逃げてみせよう」
 王様に暇(イトマ)乞(ゴ)いをして、一人は大海の底に身を潜めました。
 一人は須弥山(シュミセン…世界の中心にあるとされる山)へ入り、一人は虚空へ飛び、一人は大衆にまぎれ込みました。
 しかし七日後、四人共に、木の実が熟して落ちるのと同じく、寿命が尽き果てました。
 この様子を聞いた王様は、お釈迦様のもとを訪ね、質問しました。
「あれほどの神通力を持った行者ですら、士を免れられないものなのでしょうか?」
 お釈迦様は王様へ告げます。
「人には逃れられない四つのことがあります。
 一つは、中陰(チュウイン…生と死の間にある状態)にあれば、やがて必ず生を得て転生(テンショウ)すること。
 一つは、生まれたならば、必ず老いること。
 一つは、老いたならば、必ず病気に罹ること。
 一つは、病気になった果てに、いつか必ず死ぬことである」

 また、『十王経』はこう説いています。
「一切の衆生(シュジョウ…生きとし生けるもの)は臨終に際し、閻魔大王からの使いを迎える。
 一人は奪魂鬼(ダッコンキ)、一人は奪精鬼(ダッセイキ)、一人は縛魄鬼(バクハクキ)という。」

 なお、閻魔大王が静息(ジョウソク)と翻訳されるのは、「悪をつくる者の不善業(フゼンゴウ)を静める」という意味が込められています。
 このできごとの大意は、いかなる力を持った者であっても、閻魔大王の使いにはかなわず、からめとられて命の終わる時を迎えねばならないというところにあります。

「月使(ゲッシ)の月を還(カエ)せし威(イ)ある人も
 琰王(エンオウ)の使には縛(バク)せらる」

 この教えは江戸時代まで親しまれ、尊ばれていた『法句経(ホックキョウ)』の「梵志品(ボンジボン)」に発するものです。
 『法句譬喩経(ホックヒユキョウ)』は、短い詩文の形をとっている『法句経』の教えについて、因縁譚(インネンタン…因縁の物語)を説いています。
 当山では『法句経(ホックキョウ)』を基本的な経典とし、数年に亘る講義を続けてきました。
 宿命や閻魔様の教えに接すると、私たちの倫理感がどこからきているのか、察せられる気がします。
 よく文字の読めない人々や子供たちが、上記の文を大きな声で読み、きっと暗誦もしていた時代の日本は当時、世界でダントツの識字率だったとされているのもわかります。
 悪いことをしないではいられない私たちの心の奥底で、目に見えないブレーキが子供の頃につくられていた時代を想ってしまいます。
 不条理を知り、悪心を知り、生老病死の宿命を知った大人は、責任と自覚と畏れとをもって、子供たちを導いていたのです。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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