コラム

 公開日: 2014-06-12 

願掛けと願解きについて

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈仙台市青葉区桜ヶ丘にある『春昼堂』で出会った明善寮の絵はがき〉



 当山は、お焚きあげを行っており、いわゆる〈願解き〉についてのご質問も受けるので、少々、書いておきます。

1 本質論

 まず、根本的なところから考えてみましょう。

 私たちは、どうしてもやらねばならないことや、やるべきことに直面し、「自分にはとてもできそうにない」、「自分には荷が重すぎる」などと感じ、重圧感に眠れなくなったり、落ち込んでしまったり、逃げ出したくなったりする場合があります。
 また、住宅のローンを抱えたまま大病に罹り、「このまま死んではいられない」と悲壮な思いになったりします。
 あるいは、恋の行方を決める重大な場面を迎え、悶々として狂いそうになったりします。
 このように追いつめられた時、心のどこかに発する気持が「――神様!」「――仏様……」ではないでしょうか。

 これはとても自然なことです。
 なぜならば、私たちは、「自分で考えられる範囲など、たかが知れている」、「この世は目に見える世界だけではない」、「個々の人間や国などを超えた地球や宇宙全体の動きにかかわっている何ものかがある」と感じているからです。
 平成25年11月から26年1月にかけ、宮城県多賀城市の東北歴史博物館において「神さま仏さまの復興 ―被災文化財の修復と継承―」と題する特別展が行われました。
 被災した仏像などが修復された様子を伝えようとする試みです。
 発行されたカタログにあるメッセージです。

「神像や仏像は信仰の対象です。
 尊くありがたいものとしてふだんは人目を避けてまつられることも少なくありませんが、常に人目を避け、人との関わりを拒んでいりわけではありません。
 これらの像が作られた時はもちろんのこと、今日までまもり伝えられる間、関係者やコミュニティの絶え間ない努力がありました。」
「東日本大震災という未曾有の事態に直面した今日、こうしたコミュニティのすがたがこれまでになく明確に表れています。
 地震や津波などの被害を乗り越え、像を未来に伝えようとする地域の強い意志や行動が各地でみられ、それに多くの人々が呼応しました。」
「神さま仏さまの復興はじつに人によるものであり、このことは地域の復興への気運と方向性を同じくするものといえます。」

「歴史を振り返ると、いつの時代も、神さまや仏さまは地域コミュニティとともにあり、地域コミュニティは神さま仏さまとともにあります。
 両者は決して引き離すことのできない関係といえます。」
「あの日、多くの像が失われたり傷ついたりしました。
 それが今、無数の善意や努力によって修復が進み、神さま仏さまが復興を迎えつつあります。
 これは、地域との関係から言い換えると、地域の復興への灯りが徐々ではありますが輝きを増してきたということができそうです。」

 たとえ普段はそれほど身近に感じていなくても、仏神のおわす聖地があることは、知らず知らずのうちに心の御守になっているものです。
 個々人がどの神様を信じているか、どの仏様を信じているかというレベルではなく、地域にある神社やお不動様などの復興は、皆が吸う空気に清浄さやエネルギーを取り戻させました。
 泥の原になった場所でも小さなお地蔵様が立て直され、復興の願文が書かれた朱い衣を掛けられました。
 通るトラックの運転手は勇気を与えら、歩く人は手を合わせました。
 被災地の復興は、仏神の復興と共にあります。

 このように、私たちには、神様や仏様と呼ぶしかない方々に通じる心があり、普段はともあれ、人生の重大事に当たってすがる気持になるのは当然です。
 具体的にどこの神社や仏閣でどうするかというだけでなく、〈すがる〉気持が発した時点で願掛けは行われていると言うべきです。

 さて、こうした自然な願掛けに対して、願解きは必要か?
 結論から言えば、成就という結果、あるいは叶わなかったという結果が出た時点で、願いは結果に完結したので、願いそのものはもうどこにもなく、かけた願いをどうこうするという考えには意味がありません。
 たとえば当山でも、善男善女の思いと一体になって各種のご祈祷を行いますが、一切、結果について祈ることはありません。
 それは、祈祷は帰依(キエ)し、お任せ申しあげる誠心(マゴコロ)によって行われるので、願いをかけた人の思い通りになるかどうか、なったかどうかという〈人間のレベル〉で結果を判断するわけにはゆかないからです。
 唯一の例外は、お礼参りにこられる方、あるいはお礼の心をお示しいただいた方の感謝を体して祈る場合のみです。
 願いそのものを〈解く〉必要はないのです。
 ただし、御札や御守など法を結んだモノについては、結果が出たからといって、お役ご免とばかりにゴミと一緒に捨ててはなりません。
 それは、自分の必死の思いもゴミと一緒に捨てるようなものであり、仏神を穢すだけでなく、自分の心も穢すからです。
 そうした粗雑な心では仏神へ通じにくくなり、それは、他人や生きものたちや自然におわす仏神とも通じにくくなる道だからです。
 思いを大事にする人は、思いのこもったモノも大事にしないではいられません。
 「願いをこめた御札をそのままにしておけば、せっかく成就したのに悪いことが起こる」などと心配する必要はありませんが、しかるべき時がきたならば、どこかの神社や仏閣へ処分を頼むのが自然な姿ではないでしょうか。

2 倫理論

 いわゆるお礼参りについては、宗教的行為と言うよりは、むしろ倫理的な〈人の道〉としての、あるべき姿と言うべきです。
 人間社会でも同じです。
 重大な頼みごとをしておいて、後は放ったままにするならば、「なんという人だろう」と思われ、二度と頼みごとができなくなるかも知れません。
 何よりも、感謝や礼儀を知らぬ人となることが恐ろしいのです。

 御札や御守というモノについてのタブーなどを怖れるのではなく、自分が人間的レベルを落とすことをこそ恐れ、願いを込めた時の誠心(マゴコロ)を忘れず、後の処置をされればよろしいのではないでしょうか。
(かく言う私は、自分自身で行うべき謝恩や報恩の社会的行動については忸怩たる思いを抱いており、必要とする方々のために恥を忍んで書きました)

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。。

この記事を書いたプロ

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