コラム

 公開日: 2014-06-14 

西馬音内(ニシモナイ)盆踊り

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 秋田県雄勝郡羽後町西馬音内(ニシモナイ)に伝わる盆踊りがある。
 ふとしたことから知り、DVDを観て、情緒のいろどりに驚嘆した。
 踊る女性たちは皆、鳥追い笠という深い編み笠か、彦三頭巾(ヒコサズキン)という黒い顔隠しを着けている。
 お囃子の陽気さと踊り手のしなやかさとが相俟って、普段の生活では隠されていたいのちが流れ出す。
 きっと、〈その地〉で生き死にを繰り返してきた人々にとって救いの時間であり、空間であるにちがいない。
 救われるのは、唄い、踊るこの世の人々だけではなく、唄い手や踊り手に降りてきているあの世のご先祖様方もまた、同じく救われる。
 盆踊りは豊作と鎮魂がテーマであるというお定まりの言葉では括りきれない力に圧倒され、小坂太郎著『西馬音内盆踊り わがこころの原風景』を読んだ。

 かつて、村の農民は飢饉に苦しみ、収穫できなかった年には山へ入った。

「原始生活にかえり、山に吐いて木の実草の根をむさぼり採った。クズやワラビの根花は、飢えを救う大事な食糧となった。」

 また、昭和9年に「国民新聞」へ書かれた記事も紹介されている。

「貧しい一家が餓死線上を綱渡るために、三百七十戸の仙道村だけでも今までに、二百人の娘の姿が消えている。」
「五年間二百円の契約で手付け金二十円の契約書に印一つ。
 それで子供らは簡単に静岡や名古屋方面へ転々と売り渡され、年頃ともなれば白粉(オシロイ)の巷(チマタ)に故郷を忘れた仇花(アダバナ)と咲く。
 彼女らが山を出てから、たった一本の便りもよこした者がいないという話は悲しい。
 まして子を売った親達が、村の眠りのまださめやらぬ朝靄の中を、とぼとぼと二度と会えないわが娘の後を慕って、田代村の七曲り峠を、そして三里の仙道村真坂峠を、泣きつ咽(ムセ)びつ西馬音内の町まで見送るという話はなお悲しい。
 売られゆく子供たちは、年に一度免状式の時だけ着せられる晴れ着を着て、何がなしに嬉しく弾んだ気持で先に歩いてゆくとか……。」

 これは今からわずか80年前の光景だった。

 小坂太郎氏作『雨の峠』の冒頭部分である。

「はるかに さむく固くとがっている見える
 りんどうの花咲く あの峠は村境
 通りすぎていく雨は
 越えて還らなかった者たちの足音
 もはや名前を呼ばれることのない
 過ぎし薄明の日の女たち
 飢えを失った時代(イマ)でも
 影のように背中にはりついている さむさ
 ほそい雨露と娘たちの血をすすって
 生き継いできた田園の
 血の模様が土に染みて 波うつとき
 峠をゆくものたちは 思わずふりむくのだ
 おのれの暗がりにそびえ立つ峠を」

 こうした秋田の女性たちは「秋田美人」と呼ばれてきた。
 昭和初期の浅草で、秋田美人だけを集めた遊郭が流行っていたことについて小坂太郎氏は思う。

「戦前、雪国秋田の農村に育った女性たちは、過酷な自然・生活環境に対して順応性が強く、そこから多少の苦しみや難儀に耐え忍ぶ性格が生まれ、つねに家族のため土を守るために献身する、運命に従順な習性が育っていったのではないだろうか。
 また、他者に対する優しさ、同情深さも、社会の底辺に生きる者が、自然に身につけていったものではなかっただろうか。」

 「あとがき」である。

「このように北の国の農の女たちは、長い千年の闇のなかを生きぬいてきました。
 その闇の深さが、一層へげしく篝火を燃え上がらせています。
 願いと祈りを込めた生命(イノチ)の熱さとなり、魂の輝きとなって――。
 そしてまた、その闇のなかで、全身で内なる言葉を表現してきました。
 だから、盆踊りには、歴史的に培われてきた、この風土の感性のルーツが根っこになっているのではないか、と思われます。
 西馬音内盆踊りの妖しい美しさは、この地上に存在する、悲しみや苦しみの対象と一体化することのできる感受性、慈悲ともいえる底深い優しさの形象化から、生まれてきたものにちがいないと――。」

 西馬音内盆踊りは、物見遊山で眺められるものではなかろう。
 陽気さとしなやかさが孕む厳粛さに畏敬の念を持つ者だけが、本来、外部の人々への見せ物ではなかった崇高な芸能に接することを許されるのではなかろうか。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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