コラム

 公開日: 2014-06-25 

ご本尊様へ祈るか、ご本尊様になって祈るか ―菩薩へ近づくよき祈り―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈夜に帰山すると、いつものタヌキがミケ子の餌をもらいに来ており、車中からフラッシュ無しで撮りました〉



〈タヌキにさしたる警戒もせず、お気に入りの場所から眺めています〉

 私たちは、ギリギリの時に、仏神へ祈る。
 病気を治したい、恋愛を成就させたい、受験に合格したい、仕事が欲しい、交渉を成功させたい、などなど。
 自分の〈前〉には、お不動様や、お地蔵様や、観音様や、八幡様や、御稲荷様などがおられる。

 では、ご祈祷やご加持(カジ)を行う祈りのプロの場合はどうなっているか?
 二とおりある。
 皆さんと同じように、自分の〈前〉におられるご本尊様へ祈るタイプが一つ。
 もう一つは、自分が〈ご本尊様そのもの〉になって祈るタイプである。
 密教の行者は後者である。
 と言うよりも、そうなれなければ、密教の行者として一人前ではない。
 密教の目的はただ一つ、お大師様が説かれた即身成仏(ソクシンジョウブツ…この身このままでみ仏であるという本姿に還ること)だからである。
 つまり、祈り方には、自分が〈こちら側〉にいて至心に帰依(キエ…信じておすがりすること)し、願いをかけるやり方と、自分とご本尊様との区別がなくなるやり方との二つがある。

 大崎市にあるお宅へお祓いにでかけた時のことである。
 普段は北を向いて坐り、法を結ぶが、種々の都合上、どうしても南向きでやらねばならない。
 もちろん、実際はどの方位を向こうと、行者は北を向いている感覚で結界(ケッカイ)を張るが、はっきりと南向きでやる以上は、最初からご本尊様と一体になった覚悟でことに臨むことにした。
 お招きするご本尊様はお不動様である。
 修法が進み、「南無転迷開悟(テンメイカイゴ)不動明王」とお唱えし始めたら、止まらなくなった。
 この言葉は「心から帰依します、迷いを転じて悟りを開かせてください、お不動様」という内容である。
 お不動様の前にぬかづき、血を吐くような思いで迷いからの脱出を願う。
 しかし、祈りの中で帰依の感覚はなかった。
 修法後の法話でお話し申しあげた。
「先ほどお唱えした転迷開悟という言葉は、『この迷いや苦しみを何とかしたい』、『何とかして欲しい』という皆さんの必死な思いを代弁したものです。
 しかし、それだけではありません。
 ご本尊様からの『転迷開悟せよ』、『転迷開悟をもたらす』、『転迷開悟の中にある』というメッセージでもあります。
 必ずや、皆さんのお心から迷いや不安や苦しみが消えて行き、お宅様の暗雲も晴れることでしょう」

 そのまま、自宅葬を求めている方のため、名取市へ向かった。
 あろうことか、導師の座布団とご遺族との間に、ご遺体が安置されている。
 普通は当然、ご遺族は導師の後へお座りになられ、導師の正面にはご本尊様の掛け軸などが用意されている。
 もちろん、セッティングしたのは同席している葬儀屋さんに違いない。
 気のせいか、青い顔をして小さくなっている。
 もしかすると、こういう形でやってくれと頼まれたのかも知れない。
 お話をして家具を移動してもらえば状況を変えることもできそうだったが、次の予定が待っており、「今日はこういう日なのだ」と思って修法へ入った。
 もちろん、先ほどと同じく、自分がご本尊様であり、その前に故人とご遺族がおられるという形である。
 何の問題もなく、引導を渡し終えた。

 始まる前、故人が可愛がっていたであろうイヌが二階に追いやられ、狂ったように騒いでいる。
 犬小屋が玄関から上がってすぐの廊下に置いてあるところを見ると、いつもご主人様のそばにいたのだろう。
「イヌも家族でしょう。同席させても構いませんよ」と申しあげた。
 ご遺族は不安そうだったし、最初は闖入者(チンニュウシャ…突然入り込んできた来訪者)に吠えかかる勢いだったが、カネを慣らした途端、ピタリと気配が変わった。
 それ以降、「ワオーン」と小さな声を出したのは、結界の気合を発した時と引導を渡す瞬間だけだった。

 さて、祈り方に戻ろう。
 私たちは、誰かのために、たとえば「Aさんが元気になりますよう」と、ご本尊様へ願いをかける。
 この「Aさんが元気に」の思いが強まり、深まり、純粋に思いそのものになる時、いつの間にか、目の前のご本尊様は消えているかも知れない。
 他を思いやる清浄な慈悲心は、み仏の心そのものであり、思いはそのままにみ仏のお慈悲のお力となり光となって、相手へ届いているかも知れない。
 これも即身成仏(ソクシンジョウブツ)である。
 よき願いを持ち、祈ることは、よき心を強く動かし、菩薩(ボサツ)様へ一歩、近づくきっかけである。
 願いましょう。
 祈りましょう。
 
 今日の守本尊文殊菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=WCO8x2q3oeM



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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