コラム

 公開日: 2014-07-03 

お釈迦様と戦争

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 お釈迦様がおられた時代、インドへ流れこんだアリアン民族は、国家を形成しつつ、先住の種族たちを次々と呑み込み滅ぼし続けていた。
 種族とは、住む地域によって異なる文化を持って共同生活をしていた人々である。
 種族の一つは「農耕種族」であり、ガンジス河周辺で水田を作っていた。
 森林地帯に居住して狩猟採集する「林住種族」は、インド・アリアン社会で階級外の最下層とされた。
 山地に住む「山地種族」もあった。
 お釈迦様が属する釈迦族がクシャトリアという戦士階級に組み入れられたのは、自衛のために武装した農耕民だったからである。

 ガンジス河本流に近い地域で、鉄製農機具などを用い、国家的勢力圏を伸ばすインド・アリアンたちは、商工業の発展を伴いつつ都市経済を確立し、自給自足的な種族社会は征服され、国家の下部組織としての部族になった。
 結果的に、新興国家は種族をすべて殲滅した。
 ただし、地縁・血縁で結ばれた部族には、それぞれの文化や宗教が、かろうじて残されていた。
 無階級、非個人主義、非暴力、母権制などの社会形態である。
 お釈迦様の教団には、消えゆく共同体の面影が強く残されている。
 仏教教団の姿を見れば、征服され、滅ぼされた人々の生き方がわかる。
 お釈迦様が女性だけの教団(サンガ)をつくったのは、暴力をふるわず、女性を大切にする平等社会の復活という面もあろう。

『長老尼の詩(テーリーガーター)』にはこんな詩偈がある。

「わたしは分娩の時が近づいたので、歩いて行く途中で、わたしの夫が路上に死んでいるのを見つけた。
 わたしは、子供を産んだので、我が家に達することができなかった。
 貧苦な女の、二人の子供は死に、夫もまた路上に死に、母も父も兄弟も同じ火葬の火で焼かれた。
 一族が滅びた憐れな女よ、そなたは限りない苦しみを受けた。
 さらに幾千の(苦しみの)生涯にわたって、そなたは涙を流した。
 さらにまた、わたしはそれを墓場のなかで見た。
 子供の肉が喰われているのを。
 わたしは一族が滅び、夫が死んで、世のあらゆる人々に嘲笑されながら、不死(の道)を体得した。
 わたしは、八つの実践法よりなる尊い道、不死に至る(道)を実修した。
 わたしは安らぎを現にさとって、真理の鏡を見た。」

 この〈わたし〉は、子供が死んで狂いそうになった時、お釈迦様に救われ、出家したキーサゴータミーである。
 滅ぼされゆく人々、凄まじい貧困、そして、どん底からの救い──。

 さて、現代ではどうか。
 中国軍によって200万人以上が殺され、中国語を話せない人々は、どんどん送り込まれた漢人がつくる煌びやかな都市の路上で、子供を抱えながら物乞いとなり果てる。
 現状を見捨てておけない僧侶などによる抗議の焼身自殺。
 中国人の商売道具でしかなくなった寺院。
 そして、徹底した宗教弾圧。
 もしかすると、今のチベットは、お釈迦様の時代よりもっと、酷いのではなかろうか。

 2500年前へ戻ろう。
 コーサラ国を率いるヴィドーダバ王が釈迦族の住む地域へ進軍してきた時、お釈迦様は枯れた樹木の下で瞑想していた。
 何をしておられるのかと訊ねるヴィドーダバ。
「親族の木陰は涼しい」
 この答に、ヴィドーダバは踵を返す。
 再びの進軍にあっても、同じことが繰り返された。
 しかし、三度目は、お釈迦様の非暴力的抵抗もかなわなかった。

 かつて、コーサラ国から王姫の献上を命じられた釈迦族は、一族のマハーナーマンが下女に生ませた娘を渡した。
 それがヴィドーダバの母親である。
 やがて、釈迦族の領地へ出向いて辱められ、自分の出自を知ったヴィドーダバは復讐せずにいられなかった。
 マハーナーマンは、一族を滅ぼそうとしている我が孫へ乞う。
「わたしが今から池の中へ入るから、水中から出るまでの間、しばらく攻撃を中止して欲しい」
 攻撃はやんだが、いつまで待とうとマハーナーマンは飛び込んだままである。
 彼は、水中で樹木の根元へ髪の毛を縛りつけ、死んでいた。
 そのおかげで、たくさんの釈迦族が生き延びた。
 ただし、襲われた者たちは、お釈迦様の説く「不殺生」を戒めとしており、釈迦族は滅んだ。
 ヴィドーダバは、沐浴中に水死した、あるいは池中の宮殿で焼死したとされている。
 まさに因果応報、その鎖をまといながら、我が身を捨てて同胞を救う人もいる。

 釈迦族は、領土も一族としての生活も失ったが、族長の息子であるお釈迦様の教えは今に伝えられ、世界中で救いをもたらしている。
 約800年前(鎌倉幕府を開いた源頼朝が追放され、やがて鴨長明が『方丈記』を書く頃)に仏教が滅んだとされるインドでは、ここのところ、ようやく、身分差別や女性蔑視を何とかしようという気運が高まってきた。

 注意せねばならないのは、釈迦族はあくまでも一種族であり、お釈迦様は、私たちが想像するような〈王子〉ではなかったことである。
 お釈迦様の父親は浄飯王と呼ばれたが、同じラージャでも、都市国家の場合は〈国王〉だが、種族においては〈族長〉に過ぎない。
 最後に、勃興した国家同士の戦いに関する二つのできごとを記しておきたい。

 アジャーサットヴァ王と戦ったパサーナディ王が逃げ帰った時、お釈迦様は説かれた。

「比丘たちよ。
 マガダ国のヴェーデーヒーの子のアジャーサットヴァ王は悪友、悪い同輩、悪い仲間を持っている。
 比丘たちよ。
 コーサラ国のパサーナディ王は善友、善き同輩、善き仲間を持っている。
 比丘たちよ。
 しかしながらコーサラ国のパサーナディ王は、この夜、敗者として苦しんで眠るであろう」

 今度は、パサーナディ王がアジャーサットヴァ王を破り、生け捕りにしたが、こう考え、実行した。
「このマガダ国のヴェーデーヒーの子アジャーサットヴァ王は、わたしが侵略もしないのに侵略したけれども、かれは私の甥である。
 わたしはアジャーサットヴァ王のすべての象軍、馬軍、車軍、歩軍を奪って、彼を放してやろう」
 そこでお釈迦様は説かれた。

「人は自己に利ある間は、他を掠(カス)めとる。
 他が掠めとるときに、彼は掠められて掠めとる。
 愚者は悪のみのらざる間は、当然のことと思えども、
 悪のみのるとき、苦悩を受く。
 他を殺せば、己を殺す者を得。
 他に勝てば、己に勝つ者を得。
 他を謗(ソシ)る者は、己を謗る者を得。
 他を悩ます者は、己を悩ます者を。
 かくて業(ゴウ…道の車)転がって、かれは掠めて掠めとらる」

 この教えについては、当山のブログ「奪えば奪われる ─争いと戦争から遠ざかる道─」(http://hourakuji.blog115.fc2.com/blog-entry-4109.html)に書いた。

 以上、故宮坂宥勝師著『ブッダの教え』及び『釈尊―その行動と思想―』などを参照して書いた。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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