コラム

 公開日: 2014-07-06 

他人の善行をすなおに喜べるか、ヤクザの男意気に涙できるか ―寺子屋の教え『実語教・童子教』―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 江戸時代まで寺子屋などの教材となっていた『実語教・童子教』を読んでいます。

「もし、貧窮していて布施に用いられる財物がなくとも、
 他人が布施を行うのを目にしたならば、我がことのように喜びたいものです」

 以下は原文です。

「若(モ)し人(ヒト)貧窮(ビングウ)の身にて
 布施(フセ)すべき財無く
 他の布施(フセ)を見る時
 随喜(スイキ)の心を生(ショウ)ずべし」

 布施の心がある人にとって、自分ができない状況にあることは大変、辛いものです。
 たとえば、極貧だったり、病気だったり、家族の理解が得られなかったり、老いたり、意志があってもできない場合のもどかしさは、言葉になりません。
 そんな時、お金にゆとりのある人が多額の協力金を拠出したり、健康な人がボランティア活動で汗を流したり、家族揃って奉仕活動に参加したり、若い人が街頭募金の先頭に立ったりするのを見ると、淋しくなったり、羨んだり、落ち込んだりするかも知れません。
 そこで、もしも、他人の徳積みを本心から喜べるようであれば、自分が布施をできなくても、心は気高くなります。

 人間らしい尊さが身につくための心がけに以下の三つがあります。

1 有徳者(ウトクシャ)を尊敬(ソンギョウ)すべし

 徳の高い人は、自分で偉ぶったり、経歴をひけらかしたりしなくても、はっきりとそれらしい気配があるものです。
 こうした方に会った時、皆が皆、自分もこういう人になりたいと思えるわけではありません。
 やっかんだり、虚勢を張ったり、無視したりといった態度に陥りがちです。
 いずれも、自分を他人より低くしたくないという〈裏返った慢心〉のなせるわざです。
 これでは、人格が磨かれません。

 大切なのは、慢心に薄汚いと感じる感覚を鈍らせないことです。
 仏教では、常に自分を他人よりも高くしておきたいという誤った自己評価を「慢」と言います。
 代表的なものは「七慢(シチマン)」です。

1 慢(マン)…自分と同レベルの相手へは闘争心を燃やし、劣っている相手へは自惚れる。
2 過慢(カマン)…自分と同レベルの相手へは自分が勝っていると誇り、自分より上のレベルの相手へは自分と同レベルであると引き下ろす。
3 慢過慢(マンカマン)…自分より上のレベルの相手よりも自分はさらに勝っていると自惚れる。
4 我慢(ガマン)…自分本位で過剰な自負心を抱く。
5 増上慢(ゾウジョウマン)…力や悟りや財物など、得ていないものを得たと誇る。
6 卑慢(ヒマン)…遥かに高いレベルの相手に対して、少し負けているだけと虚勢を張る。
7 邪慢(ジャマン)…自分の悪行や過ちを認めず、すべて正当化し、愚かさを棚に上げて人徳を誇る。

 人徳者はすなおに尊敬し、自分にもその徳を分けてもらう気持が大切です。

2 善行(ゼンギョウ)を讃歎(サンタン)すべし

3 善行(ゼンギョウ)に随順(ズイジュン)すべし

 いずれも、前項と同じ心構えです。
 善き行いをしている人は心から誉め讃え、自分もその善行に加わりたいと思う気持が大切です。


「困難に陥り、困っている人を見て我がことのように悲しみ、布施をするならば。
 たった一人を救うだけでも、積まれる功徳は大海のように大きい。
 もしも、自分の利益をはかって誰かに施しを行うならば真の布施行ではなく、
 善き報いはせいぜい、芥子粒程度のものであろう」

 以下は原文です。 
 
「心に悲しんで一人に施せば
 功徳(クドク)大海(ダイカイ)の如(ゴト)し  
 己(オノ)が為(タメ)に諸人(ショニン)に施せば
 報(ホウ)を得(エ)ること芥子(ケシ)の如(ゴト)し」

 施しの最大の動機は、「ああ、大変だろうなあ」と心の底から感じる思いです。
 それが「悲しんで」の意味です。
 これが起こると、手を差し伸べないではいられなくなります。
 悟る方法について『大日経』は説きます。
「大悲を根本とする」
 そして、この心が起こるためには、前段として、「人として生きるにはどうすればよいのだろうか?」という根本的な問いと、人の道を探さないではいられない探求心がなければなりません。
「菩提心(ボダイシン)を因とする」
 つまり、人生に迷ったならば、そこから逃げず、問いと探求心を持ち続けることが大切です。
 そうしているうちに、もがく心が、もがく他者への目を開かせてくれるでしょう。
 この教えの肝は冒頭にあります。
 本当に悲しむならば、大悲が起こるならば施さないではいられず、それは容器一杯になった水があふれるようなものです。
 もう、「大海」のような功徳は約束されているのです。

 こうした純粋な気持からではなく自分を目立たせたいとか、恩を売りたいなど、自分本位な考え方で施すならば、せっかくの善行も、芥子粒ほどしか善き報いをもたらさないという教えも、しっかり、心に留めておきたいものです。
 かつて、阪神淡路大震災のおりには、山口組が数十万食とも言われるほど膨大なカップラーメンなどの備蓄品を提供しました。
 東日本大震災が発生した翌日には、稲川会が避難物資を満載した4トントラック25台で北上し、身分を隠して〈目立たぬように〉配りました。
 原発事故の後も、普段着のまま、一般道路で福島をめざしました。
 ほとんど報道されず、微かな情報ももはや、忘れられかけていることでしょうが、陰の主役として、戦後の混乱期に日常生活の秩序を維持した彼らの男意気は伏流水のように残っていたのです。
 文武両道のうち「文」は主として平時における霊性のはたらき、「武」は主として非常時における霊性のはたらきという考え方からすれば、常々、暴力を看板に生きている彼らが非常時に大いなる力を発揮したのも、むべなるかな、という感があります。
 警察も自衛隊も、武の人々ではありませんか。
 ヤクザとして嫌われ、蔑まれている漢(オトコ)たちは、物資を何としても〈受けとってもらいたい〉一心で、黒子のように注意深く行動しました。
 決して忘れられません。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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