コラム

 公開日: 2014-07-18  最終更新日: 2014-07-24

【現代の偉人伝 第192話】―元ドイツ連邦議会議長リタ・ジェスムート氏―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈朝日新聞社様よりお借りして加工しました〉

 7月17日付の朝日新聞に「移民政策 ドイツの経験」が掲載された。
 インタビューを受けたのは、元ドイツ連邦議会議長リタ・ジェスムート氏である。

 ドイツは第二次世界大戦後、復興を担う外国人労働者を受け入れた。
 彼らは、ドイツに滞在する期限を切られたガスト・アルバイターだった。
 ドイツは移民政策をとらない国だった。
 保守系コール政権の閣僚として女性や若者を担当したジェスムート氏は、移民はいないという建前の中で暮らす外国人の悲惨な状況に直面する。

「わかったのは貧困や差別などの問題を抱える女性や若者の多くが、ドイツに長く暮らす外国人だったことです。
 ドイツ語が十分に話せない。
 教育水準も低い。
 ほかの人と同じ権利や機会を持つ人間とはみなされていない。」
 
 同じ国に暮らしながら同じ〈人間〉としての扱いを受けていない人々がいることに、女性である氏がいかに強烈な衝撃を受けたかが、率直に述べられている。

 ジェスムート氏が所属する保守系野党であるキリスト教民主同盟(CDU)は、支持者が離れることを怖れ、問題の改善をめざす氏を攻撃した。
 しかし、氏は揺るがなかった。

「この問題は党はで争うべきテーマではない。
 国のあり方にかかわる問題である。
 だからすべての政党が協力して正面から向き合わなければならない。」

 国の姿にかかわる問題は党利党略、派利派略の次元で扱ってはならないのだ。
 氏はすでに、将来、議長となるだけの人物だった。

「移民の受け入れは、単に労働力を受け入れることではありません。
 彼らも家庭を持てば、子供を学校に通わせる。
 病気になれば医療機関で治療を受けるし、年をとれば年金をもらう。」

 何と暖かな言葉だろうか。
 庶民が生きる現場を知り、同時に世を動かす政治の現場にもいる人ならでの深い思いやりが感じられる。

「ただ、たとえ出身地が外国であっても、ドイツ社会の構成メンバーになるからにはドイツの原則や理念を受け入れてもらわねばなりません。
 かといって、価値観を一方的に押しつければいいわけでもない。
 彼らの固有の文化も尊重されてしかるべきでしょう。
 少数者の権利や文化を認めるということも、ドイツの基本的な価値観だからです。」

 これこそが、政治の責任であり、決断であり、国民に理解と納得と協力を求める問題である。
 国境はあるが同時に一つの文化圏でもあるドイツで暮らそうとするなら、ドイツの水を本当においしいと思いながら飲んで欲しいという。
 外国人は、お金を稼いで母国へ送金するために大切なドイツを〈利用するだけ〉の存在であって欲しくない、それでは、国が潤いをなくす。
 もちろん、国も、外国人を〈利用するだけ〉の恥知らずな国であってはならない。

「大切なのは『寛容』よりリスペクト(敬意)。
『ここにいても構わないが、最終的に〈あなたたち〉は〈私たち〉と違う』ではだめなのです。
 ドイツ人と移民とが互いに依存し合う関係であるという感受性を、幼稚園から大学教育まで浸透させねばなりません。
 単にドイツ語の読み書き能力だけでなく、彼らがドイツ社会に積極的に参加すればきちんと評価することも重要です。」
 
 今、ドイツにおいて、お大師様のマンダラ思想がよく研究されているという。
 縁の糸を感じるのは仏教的感性であり、縁に連なるものたち個々がそれぞれなりにかけがえのない光を発していると感じるのは、華厳(ケゴン)の感受性であり、全体像としてのマンダラを拝する密教的感性にも重なる世界である。
 それにしても、「寛容よりも敬意」とは、何という積極的な慈悲の発露だろう。
 一つの文化圏に責任を持つ政治家として、あまりにも抜きん出ているのではなかろうか。
 氏のバックボーンである宗教の力なのだろうか。

「重要なのは、政治のリーダーシップです。
 リーダーがわずかでも不安や恐怖をあおれば、社会はさらに過敏に反応します。
 政治家だけでなく、経済界、労組、教会など大組織を率いる人は、移民問題に向き合い、責任のある発言をすべきです。」

 日本でヘイトスピーチが流行りだした原因は、はたして、〈外国〉だけにあるのだろうか。
 朝から毎日、北朝鮮問題や韓国問題や中国問題を流し続け、優越感や敵愾心を煽って視聴率を稼ぐテレビ局などにも原因を見つけ出せはしないだろうか。

「今の出生率を考えれば待ったなしです。
 外国人に日本語を学んでもらい、生活習慣を受け入れてもらうのも大事ですが、彼らの価値観を尊重する姿勢を見せなければ、もう望んで日本に来てくれなくなるでしょう。」

 日本で大金を稼げると思えば、侮辱にも過酷な労働にも耐えるだろうという考えはもはや、通用しなくなっている。
 日本以外のアジアで、外国人が尊厳を守られながらしっかりした収入も得られる地域が急増している。
 もう、とっくに、日本の足元は崩れつつある。
 土台を強化することはまさに「待ったなし」であろう。

「ドイツにとって移民国家への転換は外国人を『リストやコストと考える文化』から『ドイツに貢献する歓迎すべき人々と考える文化』への転換でした。
 時間がかかり、まだ課題もありますが、水面下で物事を進めるのでなく、開かれた場所で議論すべきです。
 私たちはそうして多くを学び、成功に近づいたのです。」

 文化の選択、転換は、まぎれもなく、時間をかけ、公開の場で行うべき国家的、全国民的問題である。
 耳が痛いとはこのことである。
 政府が国の根幹を変え、あとはそれを〈説明するだけ〉という日本とは、あまりにかけ離れている。
 思えば、私は中学生の頃から、「行きたい外国は?」と問われると、必ず「ドイツ、できることなら住んでみたい」と答えてきた。
 この答を受け、おそらくは「あのナチスとヒットラーのドイツか?」と考えたのであろう、露骨に顔をしかめる先生もおられた。
 今、さすがはドイツ、と思う。
 
 もはや氏はドイツ一国をマンダラと考えているのではなかろう。
 本当は、地球が一枚のマンダラなのだ。
 地域社会という小さなマンダラが集まって国家という大きなマンダラとなる。
 そして、国家という大きなマンダラが集まって、地球という全体を形成する。
 こうした真実が本当に理解され、生きる現場を支える思考となるための〈マニュアル〉や、〈うまい手〉などは、ありようもない。
 国民の一人一人が自分の頭で考え、「開かれた場所で議論」するしかない。
 叡智に導かれ、誠実に、地道に、皆で〈議論〉という汗を流すしかないのではなかろうか。


〈祈るマンダラ〉

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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