コラム

 公開日: 2014-07-25 

【現代の偉人伝 第193話】―いじめから仲間を守った女子児童―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





1 身代わりを買って出た女子児童

 7月20日付の産経新聞は、仲間をいじめから救った小学3年生の女子児童が暴行され、ケガと精神的ショックにより学校を3週間休んだと報じた。

「3年生のクラスで4月以降、1人の女子が複数の男子などから、砂をかけられたり、悪口をいわれたりするいじめを受けていた。
 問題が起きた前日も嫌がらせを受けており、見かねた女子児童が、『放課後児童クラブ』(学童保育)の場で『いじめるなら私を代わりにいじめて』と言って止めようとした。
『いじめてもいいんだな』。
 翌日、その発言を聞きつけた男子2人と女子1人が、こういって跳び蹴りなどの暴行を加え、頭部打撲など1週間のけがを負わせたという。
 しかし、担任の男性教師(23)の対応は鈍かった。
 休み時間が終わって教室に入った教師は、暴行に気付いて制止したものの、被害者の女子児童を保健室や病院に連れて行かなかった。
 保護者への連絡も翌日になってからで、女子児童はその後、けがと精神的なショックで、学校を3週間休まざるをえなかった。」

 周囲の対応にも問題があったと報じられている。

「市教委によると、担任の男性教師は大学を卒業したばかりの新任で『学級運営に問題があった』という。
 4月以降、子供たちが男性教師の指示に従わないことがたびたびあり、それは学校側も把握していた。
 今回の暴行が起きる直前の6月1日に開かれた校内会議では、担任と別の教員による2人体制で授業を行うことを決めたが、結果的に対応は後手に回った。
 男性教師は同級生へのいじめを『遊び』や『からかい』としか認識しておらず、市教委担当者は『経験の浅い担任を支える態勢をもっと早く整えるべきだった』と反省を口にする。
 今回の暴行で、その日のうちに保護者に連絡しなかった対応も不適切だ。
 いじめ問題に取り組むNPO法人『ジェントルハート プロジェクト』の武田さち子さんは『暴行の身体的な影響が帰宅後に生じても、学校での出来事を知らなければ、保護者は適切な処置ができない。学校はその日のうちに保護者に説明すべきだ』と話している。」

 平成22年には、仲間を庇いきれなかったと書き置きして自死した篠原真矢君(当時14才)の父親は言う。

「教師や学校がいじめを傍観するから、子供たちは、何とか自分の力で解決しようと追い込まれてしまう。
 いじめは犯罪であり、子供に『立ち向かえ』と指導するのは間違いだ」
「息子も含めて、大人が美談にしてはいけない」
「大人が犯罪を警察に通報するように、子供がいじめを大人に通報しやすくすることが大切だ。
 子供たちには、いじめの告発がチクり(告げ口)ではなく、正当な行為なんだと分かってほしい」

2 ベトナム戦争・原爆投下・ワールドカップ・小泉劇場

 そもそも、弱い者をいじめるのは卑劣であるという感覚を育てていないことが問題続発の最大要因である。
 いじめる子供はもちろん、その場で厳しく叱らず、遊びの一部だと受けとめる教師にもまた、卑劣さに対する嫌悪感が欠如しているのではないか。
 この問題は根深い。

 ベトナム戦争において、アメリカ軍はジャングルに潜むベトコンを殲滅するため、「枯葉作戦」を行い、ダイオキシンを含む猛毒7200万リットルを投下した。
 奇形児など、その後遺症に悩む人々は二百数十万人に及んでいる。
 1968年3月16日、ベトナムのソンミ村において、カリー中尉の指揮による大虐殺事件が起こり、内部告発や証拠写真など明白な証拠があるにもかかわらず、終身刑を受けたカリー中尉は英雄視され、上官であるメジナ大尉は、4時間にもわたった大虐殺を知らなかったという理由で無罪となった。
 広島に原爆を投下した機長は、「もう一度、同じ立場に立たされたなら、またやってみせます」と宣言し、拍手喝采を浴びた。
 いずれも根底には有色人種への差別意識があり、たとえ相手が弱い者であっても、完膚無きまで叩くことが許されているという驕りがある。
 ここでは、弱い者いじめは〈見せ物〉となり、拍手を招くのである。
 どこか似たような気配のあるできごとが、サッカーワールドカップのブラジル大会でも見られた。
 準決勝のドイツ対ブラジルの対戦において、絶対不利に陥ったブラジルへ対し、ドイツはおもしろいように7得点を重ねた。
 もちろん、ルール違反は何もないが、まるでダウンしているボクサーを完膚無きまで叩くがごとき様相を呈した。
 仏文学者でありスポーツ評論家でもある蓮實重彦氏は、「陰惨」と表現した。

「あれはもうサッカーではない。
 ドイツが7点もとってしまったことは、果たして成功なのか。
 もちろん、勝利したという点では成功なのですが『サッカーをサッカーではないものにしてしまった』という点においては醜い失敗だったとしか思えません。 
 誰かがドイツ代表の精神分析をやらなくてはならない。
 どこまで点が取れるのか、面白いからやってみよう、というぐらいの気持になっていたと思うのですが、どう見ても7点も取ってはいけない。
 何かが壊れるし、人の道から外れているとしか思えない。」

 日本では、小泉首相の郵政選挙が同じ色をまとっていた。
 反対派を守旧派と決めつけ、〈刺客〉を向ける勧善懲悪の劇場を煽り立てるマスコミに乗せられた国民は踊りに踊った。
 人徳も功績も能力も主張も、レッテルには適わない。
 守旧派のレッテルを貼られた候補者はハンデを負った戦いの中で一方的に叩かれ尽くし、叩く者は拍手を浴びた。
 あまりにも異様な光景だった。

「弱い者を苛めてはならない」
 これは、私たちが人の道から外れないためのあまりにも重要な倫理的戒めである。
 なぜなら、相手の尊厳を無視するという決定的な悪、すなわち卑劣な行為への歯止めだからである。
 枯葉作戦も、ソンミ村の虐殺も、ドイツの完勝も、郵政選挙の劇場も、同じ卑劣さを帯びている。

3 私たちは「まっとうさ」を追い求められるか

 冒頭の女子児童はきっと、優しい気持と共に、〈卑劣〉と感じるまっとうさも持っているのだろう。
 そうした者が暴力を受けて尊厳を傷つけられるだけでなく、登校するという基本的な権利も踏みにじられる。
 何という象徴的なできごとだろうか。
 私たちは実に、人間を人間そのものと観られないさまざまな色眼鏡を持っている。
 人倫の根拠を持たない高慢心、対戦相手を尊重しない野蛮な感覚、危うい善を奉じる優越感。
 女子児童はまだ、そうしたものを持ってはいない。
 だから、卑劣な行為が許せなかった。
 こうしたまっとうな人間を被害者にしてしまう、あるいは見捨てる邪悪な心は、私たち皆の胸に深く、深く、巣くっている。
 残念で恥ずかしいできごとを忘れず、よくよく省みたい。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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