コラム

 公開日: 2014-08-01 

合掌し、心におられるみ仏と会おう ─東北関東大震災・被災の記(第155回)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈クラゲは獲物を狙わず、触手で感じとった縁のものによって生きています〉

 7月5日、大震災によって生まれた膨大な悲しみに人と社会がどう対処すればよいかを問うシンポジウム「震災と宗教―悼みと向き合える社会へ―」が開催された。
 場所は東北学院大土樋キャンパスである。
 7月27日に掲載された河北新報の記事を元に、宗教者としてかかわってみたい。

 パネリスト6名へ与えられたテーマは「〝悲しみの技術〟を巡って」である。
 今回を最終回としたい。

3 死者と共に生きる方法は?

 東北学院大副学長、教養部教授である佐々木俊三氏は問を発した。

「死者と共に生きるような柔らかさのある社会を現代の日本に取り戻すことはできるのだろうか。」

 こうした問いに接すると、いつもお大師様の教えを思い出す。

「仏法は、私たちの日常生活から離れたどこか遠いところにあるのではない。
 私たちすべての心の中という最も近いところにある。
 
 悟りの真理は、私たちの外にあるのではな。
 私たち自身を離れていったいどこに求めようというのか。

 迷いも、悟りも、自分自身そのものにある。
 だから、そのように気づく時、すでに、迷いを離れ悟りを得る境地へ達している。

 悟りの明るい世界も、迷いの暗い世界も、私たち自身を離れた何ものかに原因を求めてはならない。

 だから、自分の身体と言葉と心のはたらきについて正しく知り、正しくはたらかせる方法を学び実践すれば、こうした真実はたちまちにして明らかになることだろう。」

 これは、般若心経について解き明かした文章の冒頭近くにある教えである。

 私たちは、心がクシャクシャになった時、山へ行き、海を眺め、鳥や虫の声や潮騒に目や耳を任せる。
 ジョン・コルトレーンやエンヤに聴き入り、我を忘れるひとときを持つ。
 それは、掌中に丸められた一枚の白紙を静かに広げ、皺を伸ばすようなものである。
 いったんは、机の上に広げられ解放されても、そのうちにまた否応なく、見えない手によってクシャクシャにされる。

 どうすればすんなりと紙を伸ばし皺を取れるか、あるいは、クシャクシャにされないためにはどうすればよいか。
 宗教の歴史は、こうした〈方法〉を探求してきたと言える。
 そして、有効と認められた方法こそが、現代人に伝えられた宗教である。
 仏教について現況を観れば、学び実践している人々にとっては充分に有効であっても、無関心であることを含め、知らない人々にとっては何の効力もない。
 もちろん、知った上で近づかない方や批判する方もたくさんおられ、そうした方々を批判したり教化したりしようとする姿勢は、仏教的なものではない。

 さらに、人生相談やご葬儀やご供養を行っている現場の者の実感としては、葬儀や供養という〈慣習〉あるいは〈習俗〉についてはある程度、知られいても、宗教的〈意味〉や〈意義〉については、ほとんど知られていないというのが実情である。
 その証拠に、お通夜やご葬儀の後で必ず行う法話において、戒名は何であり、どうやって決まるか?お線香やお花は誰の何のために捧げるのか?といったお話を申しあげると、驚くほど多くの方々から「初めて知りました」「驚きました」と言われ、感激される。
 そして、これまで、肝腎な宗教的真実が伝わらず、宗教行為がほとんど社会通念上行われる〈儀礼的行為〉に堕してしまった現状に打ちのめされ、奮い立ちもする。
 現場に立つ僧侶たちが檀家制度という社会的枠組みに長年、安住してきたことの結果であり、現代の僧侶たちは、急速に風化し崩壊して行く枠組みにすがらず、托鉢行を行ったお釈迦様やお大師様と同じような「出発」を覚悟すべきであると思う。

 ちなみに、当山はこう願をかけて無からスタートした。
「この世の幸せとあの世の安心」
「法灯に因(ヨ)り、法友と共に、法楽に住せん」
 人間関係や病気など、この世の幸せを脅かす状況に、救いを求める方々と一緒に、立ち向かいたい。
 自分の死、周囲の人々の死、そして、悼む思い、こうしたあの世の安心を脅かす状況に、救いを求める方々と一緒に、立ち向かいたい。

 冒頭の問いに対して、自然、芸術、哲学、歴史、さまざまな分野からの回答があることだろう。
 伝統仏教の実践者としては、人類が深化させてきた宗教を離れて、空の彼方に救いを求めるといった方法は考えられない。
 伝統的、かつ斬新な作風で知られる家具職人増野繁治師の言葉を思い出す。

「無から自分が創り出す新しい技法などはありません。
 ただただ、先人に憧れ、学ぶのみです。」
 
 最後に、お大師様が「自分の心におられるみ仏に気づくべし」と説かれた原文を挙げておきたい。

「夫(ソ)れ、仏法遥かに非ず、心中にして、即ち近し。
 真如(シンニョ)、外に非ず、身を棄てて何(イズク)にか求めん。
 迷悟(メイゴ)我れに在り。
 則ち発心(ホッシン)すれば、即ち到る。
 明暗、他に非ず。則ち信修(シンシュ)すれば、忽(タチマ)ちに証す。」

 最後の最後に申し添えておきます。
 仏教を学び実践することは誰にでも、いますぐに、できるのです。
 仏教は難しい、と腕組みしをていたならば、幾度生まれ変わっても仏教による救いとは無縁なままでしょう。
 毎日、24時間、仏法を生きているつもりの私も到底、「仏教というもの」など、わかりはしません。
 だから、一輪の花と亡き人とを思い浮かべ、念じてみましょう。
「この花のように、雨風に耐え、人としてきちんと生きて行きますから、どうぞ、ご安心ください。
 どうぞ、お見守りください」
 これであなたも立派な仏教徒であり、人の道を一歩、確実に前へ歩んだことになるのです。合掌

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

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