コラム

 公開日: 2014-08-20 

【現代の偉人伝 第194話】―「天と良心」を畏れる医師中村哲氏―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






〈「用水路を造るのは簡単ではないが、維持はもっと努力が要ると力説」する中村哲氏「ペルシャワール会報」よりお借りして加工しました〉

 今さら高名な中村哲氏をとりあげるのもおかしな話だが、どうしても書いておきたい。
 ある日、80才を超えたAさんから聴いた。
「身辺整理をしています。
 最後まで残っているのがペルシャワール会です」
 今から30年前、パキスタンのペシャワール・ミッション病院ハンセン病棟に赴任した医師中村哲氏は、その後、パキスタン、アフガニスタン両国において、医療という枠を超えた広範囲な活動に邁進してきた。
 その活動を支えているのが「ペルシャワール会」である。
 特に、平成13年、空爆の行われているアフガニスタンの避難民を救おうと『アフガンいのちの基金』を設立し、15万人もの人々へ物資を救ったことは忘れられない。
 東日本大震災の5日後、当山は「東北関東大震災・被災の記(その6)」に書いた。

「混迷深いアフガニスタンにおいて貧困層の医療に献身的な情熱を注ぎ、20年以上もの長い年月を過ごしている医師中村哲氏の血を吐くような警句を思い出す。

『我われの敵は自分の中にある。
 我われが当然とする近代的生活そのものの中にある。』

 現代文明にどっぷりと浸っている私たちは、ここで立ち止まろう。
 プラント建設を〈原因〉とし、想定外の地震を〈縁〉として生じた原発事故の帰趨にかかわりなく、何としても立ち止まろう。」

 Aさんの言葉に背中を押され、あらためて「ペルシャワール会」のホームページを読んでみた。

 中村哲氏は、決壊した堰を修復し、30万農民の生活を確保するための活動について書かれた。

「カシコート自治会は、対岸の戦闘地に神経をとがらせ、『作業地に着弾すればカシコート30万家族を敵に回す』と檄をとばし、両軍の戦闘員に圧力をかけます(実際は数千家族ですが、多数を「30万」と表現します。また、貧しい寒村は、両軍に出稼ぎ傭兵を送って生計を立てざるを得ない事情があります。戦の圧倒的犠牲は、貧困にあえぐ者同士が戦わされることによります。『故郷で耕して生きられるなら、兵隊や警官にはならない。』みな、そう言います)。
 この事情で、天と良心以外に、何を畏れるものがありましょう。
 数百名の作業員は迷いなく、みな心をひとつに、黙々と作業が進められています。」(2013年12月11日発行「ペシャワール会報」118号より)

 現場では「天と良心」のみを畏れつつ、粛々と作業を続けるという。 
 畏の字は、鬼の頭をした者が呪力のある杖を持って立つ形である。
 人間の営みを一呑みにしてしまう自然の猛威は、人知・人力の及ばない鬼の領域である。
 また、ともすれば良心を忘れたり、離れたりしがちが人間にとって、絶え間なく見張り、鉄槌をくだす鬼の存在は大きい。
 遙かな地の人々ならずとも、「天と良心」を畏れつつ行うところに、不安や恐怖はなくなることだろう。
 
 中村哲氏は、連続堰(セキ)の完成に際して書かれた。

「人も世も様々です。
 今さら無理解の壁を嘆いても悲しいばかりです。
 せめて東部アフガンの一角で人々が生き延びる望みを得たこと、その実証に祈りを託すのみです。
 確かに私たちはアフガン人に成れないし、アフガン人は日本人に成れません。
 だが、その壁を厚くするような昨今の風潮―自然を無視して宗教や文化、生活様式まで裁き、そのためには戦争も肯定しかねない流れ―は危険です。
 知の傲慢が暴力ともなります。
 違いや矛盾をあげつらって拳を上げるよりも、血の通った共通の人間を見出す努力が先だと思います。
 私たちの活動が、このような壁を超えようとする努力と、温かい他者への関心の結実だとすれば、これに勝る喜びはありません。
 そして、これが譲れぬ一線でもあります。
 仕事はまだまだ続きますが、これまでの支えに心から感謝します。」(2014年4月1日発行「ペシャワール会報」119号より)

 氏はこれまで、重ね重ね「知の傲慢」を指摘してきた。
 〈知〉が〈血の通った人間〉から遊離してはたらけば、たやすく暴力に結びつく。
 高慢心や嫉妬や軽蔑は、相手へ対する害意にどんな理由付けもしてしまう。
 そこには「温かい他者への関心」が欠落している。
 また、「温かい他者への関心」がなければ、戦争は容易に起こる。
 戦乱の地で、氏はそのことを骨の髄まで知られたのだろう。

 謙虚に「天と良心」を畏れ、「温かい他者への関心」を忘れず、「知の傲慢」を戒めつつ進みたい。
 遙かな地でそれを実践しておられる氏に想いをいたしつつ進みたい。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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