コラム

 公開日: 2014-08-29 

自分が自分の人生の主人公であるために ─東北関東大震災・被災の記(第156回)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 8月26日、福島地裁は、原発事故による避難生活中の自殺について、損害賠償請求を認めた。
 同様の自殺や自殺未遂が相継ぎ、被災者が苦しんでいることは歴然たる事実なのに、これまでは、事故との因果関係が司法の場でほとんど認められなかった。
 できごとには複数の原因があり、その中は直接的な原因と間接的な原因がある。
 裁判では、〈引き金〉が何であるかを争うのだろうが、個人的事情など易々(ヤスヤス)と丸呑みにしてしまうほど巨大な原発事故は、〈引き金〉として認められてこなかったと言える。
 あまりにも多くの人々の人生を狂わせてしまったがために、かえってわかりにくいのかも知れない。
 東電が「個人的要因を踏まえて因果関係の有無を判断すべきだ」という姿勢で争ってきたのはこのことである。
 皆が酷い目に遭っているのだから、特定の人がそのことで決定的に追いつめられようが、それは性格や考え方や家庭環境など特定の事情によるものであって、困難から立ち上がった人もいる以上、座りっきりになった人に対して責任をとる必要はないということだろう。

 この論理がおかしいのは、食中毒を考えてみればすぐわかる。
 腐りかけた食材を用いた料理によってお腹を壊した人と何でもない人がいた場合、お腹を壊した人は、「あなたの腸が弱いせいだよ」と言われ、料理を提供した側の責任は認められないのだろうか?
 もしも、100人のうち99人が異常を訴えなくても、提供者は被害者となった1人に対して責任を持つべきではなかろうか?
 そこを見過ごさない基本的な了解を共有している日本社会であればこそ、学校給食の場などで、アレルギー対策が進んできたのではなかったか。
 東電の姿勢は、「アレルギーを持った子供がたまたま不調になったからといって、給食を用意した側に責任はない」と主張し、被害者のアレルギー体質を暴こうとしているに等しいことを私たちはよく考えてみたい。

 ここには、私たちの社会はどうあるべきかという根本的な問題がある。
 その前に、いったい、私たちの社会はどう動いているのか、私たちはどう動かされているのか、という問題がある。
 それと気づかぬうちに、私たちの頭から被せられている巨大な災厄の網はないか?
 何者かの都合による巨大な暗示はないか?
 原発の安全神話は、巨大な暗示であり、結局は巨大な災厄の網であり、事実として巨大な災厄を招いたのではなかったか?

 渡辺京二著『無名の人生』の一節である。

「『自分はいつも世界の中心にいる』というのは、△△村に住んでいて、その△△村だけが自分の知っている世界である、というのとはちがいます。
 この地球上のどこに住んでいようが、どんな田舎に暮らそうが、そこに照る太陽は同じだということなのです」

 当山で行じている隠形流(オンギョウリュウ)居合も、同じ感覚を持っている。
 観想をこらせば、いつも自分の北側には千手観音様がおられ、西側にはお不動様がおられるといった、自分を宇宙の中心とする守本尊マンダラの実現こそが目的である。
 どこにいようと、み仏の慈光は変わりなく照らしてくださっていることに気づきたいのだ。

「そういう『自分だけのコスモス』は、一人ひとりの人間が持っています。
 そこには『中心』も『地方』もない。
 一人ひとりを取り巻くコスモスと向かい合っている点では、都会の人間も地方の人間も、まったく変わりがないのです。」

 こうした自立した意識を持ち、自分の頭で考えれば、巨大な災厄の網に気づく。
 巨大な暗示につかまらない。

「いま言われている『自己実現』というのは、何のことはない、社会的地位や名声を得ること、つまり成功すること、出世することをそう言っているので、人びとを虚しい自己顕示競争に駆り立てるだけです。
『自分の人生の主人公になる』というのは、これとは似て非なるものです。
 無名であっても平凡であっても、というより、むしろそうやって『有名になる』ことに囚われないほうが、自分の人生の主人たりうるのです。」

 かつて、当山に人生相談にこられたAさんを思い出す。
 当時高校生だった可愛いAさんは、タレントを目指していた。
 そのために自分をしっかりさせようと懸命だった。
 今、Aさんは看護士として活躍中ですある。
 母親は、頑張り屋のAさんが身体を壊さないかと心配している。
 Aさんは、「自分が自分の人生の主人」である生き生きした日々を過ごしているに違いない。

「人間はみな大差のない存在であって、人に抜きんでる必要などありません。
 この世で、一人ひとりの存在は、それ自体でおのずから肯定されているからです。
 だからといって努力を惜しんではいけません。
 たとえば友人と付き合うにも、好きな異性と付き合うにも、努力が必要です。
 自分に合った職分というものを自分で見つけだし、その職分をまっとうするにも努力が必要です。
 そういう努力を積み重ねながら、平凡に、無名のままに過ごすのは、つまらないことでも、虚しいことでもありません。」

 当山では、仏法が「まっとうに生きる」ための役に立てればありがたいと考えている。
 そして、一人ひとりがまっとうになれば、まっとうな社会になると信じてもいる。
 自己実現という言葉によって自己顕示欲を駆り立てられ、目の前にぶら下げられた幻のニンジンを追い、いつも〈有名になれない〉あるいは〈お金持ちになれない〉といった不満や自己否定を続ける必要はない。
 私たちは一人残らず皆、み仏の子であり、まぎれもなく「それ自体でおのずから肯定されている」存在である。
 頭から被せられている巨大な災厄の網に早く気づき、自分が自分の人生の主人公であるよう誠実な努力を続けたい。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、この世の幸せとあの世の安心を祈っています。

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