コラム

 公開日: 2018-02-17  最終更新日: 2018-03-07

危ない固定残業制

 使用者は、労働者に時間外・休日・深夜労働をさせた場合には、法所定の割増賃金を支払わなければなりません(労基法37条)。

割増賃金に関しては,最近、固定残業代をめぐる解釈問題が裁判例で多く出ております。

これは,割増賃金について、労基法37条所定の計算方法によらないで、固定残業代として支払うことが許されるか,許されるとすればどのような要件が必要かという問題です。

定額手当制と定額給制の2つの制度

固定残業代を採用している多くの会社は,①時間外労働等に対して定額の手当を支給する制度(定額手当制)または②基本給の中に割増賃金を組み込んで支給する制度(定額給制)のいずれかを採用しております。

行政解釈では,「労働者に対して実際に支払われた割増賃金が法所定の計算による割増賃金を下回らない場合には、労働基準法37条違反とならない」としております。この結論は,判例・学説においておおむね承認されております。

明確区分要件

ただ,①定額手当制度では,定額手当が割増賃金に代わって支払われるものであることが就業規則等で明確にされ、かつ基本給と割増賃金に相当する部分を明確に区別しておかなければなりません。②定額給制度では,定額給のうち割増賃金に相当する部分とそれ以外の部分を明確に区別しておかなければなりません。これらを明確区分要件と言います。
このように区分された定額手当または定額給の額が労基法37条所定の計算方法に基づく割増賃金を満たしていなければ,使用者に差額分の支払義務が生じます。

定額残業代のリスク

企業にとって恐ろしいのは,せっかく定額手当制または定額給制を採用したつもりでいたのに,後の残業代請求訴訟において,裁判所から上記の明確区分要件を満たしていないと判断された場合,これらの定額手当制・定額給制も基本給に組み込まれ,さらに残業代を支払えという命令が下されることがあるからです。

定額手当の例でいうと,基本給25万円,定額残業代5万円を毎月支払っていたのに,何時間分の残業代であるかを就業規則などで明示していなかったなどの理由で後の裁判で明確区分要件を満たしていないと判断された場合,残業代計算の基礎となる賃金が月25万円出なく月30万円として計算され,これを元に残業代計算がなされてしまうことになります。定額残業代を支給した意味が全く無いばかりか,そのような制度を設けなかった場合よりも高く付くことになるのです。

ですので,定額残業代制度を設ける場合は,裁判などで要求されている明確区分要件をしっかり意識して就業規則,給与明細書などを作成するべきでしょう。

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