コラム

 公開日: 2017-07-06  最終更新日: 2017-11-04

遺言書は作りませんよ?

「遺言書を作成してほしいと入院中の義理の姉(以下Aさん)が言っているので、相談に乗ってほしい。」
そういった問い合わせが、相談者である義理の妹さん(以下相談者)からありました。

知らされた入院先の病室に伺うと、Aさんは開口一番、
「あなたが千葉さんね? 初対面のあなたには分からないと思うけど、私はこんなに体調が悪くなって入院したのは初めてだから、もしかすると死ぬかもしれない。だから遺言書を書きたいんだけど、手が震えて字が書けないので、何とかしてほしい」ということでした。
開口一番のやり取りがあまりにハッキリした力強い口調だったので、たぶん直ぐには死なないと思いました(第一印象ですが)。
※やはり直ぐに回復し、今現在もピンピンされているので・・・ま、こういうことを申上げても許容範囲でしょう・・・苦笑

さて、話が脱線しましたが、
Aさんは数年前亡くなった、相談者のご主人の実姉さんで、相談者から見ると義姉さん。相談者はAさんとは20歳以上も年齢が離れていて、ご主人様の生前からずっと日常生活のお手伝いをされていたそうです。

遺言書を書きたいと仰っていた動機は、Aさんの推定相続人が数名いらっしゃいましたが、Aさんはどうしても、ずっとお世話をしてくれている相談者に全財産をあげたいというもの。(相談者は相続人にならないため)。

そして、色々知っていらっしゃって、公証人と言う人にここに来てもらって、公正証書で遺言を作る手伝いをしてほしい、だから、その段取りや遺言書の大まかな内容を私の代わりに書いてもらって、立会する人(証人のこと)もあなたで探してほしい・・・と。
もしかして、他に法律職の方にでも相談されているのかと思いましたが、後に回復されてからお聞きしたところ、昔お身内でそういう風にされた方がいたので克明に覚えていらっしゃったようです。

現状やご要望をお聞きしたので、一旦病室を出て、その足で相談者のお宅へ向かいました。

相談者のお宅につくと、私が名乗るよりも前に、開口一番「どうでした?」と相談者(この時点では初対面です)。
ちょっと面食らった感じを悟られないように、
「不謹慎ですが、すごく元気に見えましたよ。だから、落ち着いて今後のことを打合せしても大丈夫な気がしました。申し遅れましたが千葉です(一応名刺も)。」と応答。

相談者もAさんに負けず劣らず遺言書の知識がおありで、遺言書についてのご説明申上げるというよりは、あの手順をどうすれば・・・この手順が問題になる・・・という感じの話し合いになりました。

話が進む中で、Aさんの相続人は兄弟姉妹のみであることがわかりました。
そして、Aさんの療養看護をしているのは長年相談者のみであったことと、今後もそれは変わらない(お世話をしてあげたいという含み)というご意思の確認もできました。

相談者はAさんの意思(全財産)はもちろん気持ちとしては嬉しいけど、他の人(兄弟姉妹)のものだからね・・・私が逆だったら、やっぱり面白くないと思うんじゃないかしら・・・
相談者なら当然だと思いました。こう考えられる人だから、長年療養看護にお努めになっているのだろうと。

ここまで前置きすると「やっぱりか」と思われる方もいるものと思いますが、
私は、「Aさんと○○さん(相談者)が親子になれば?」と思い切って言ってみました。つまり養子縁組してはどうかということです。

続けて、
「もちろん、真剣に考えるのであれば、他の人(兄弟姉妹)へも、(縁組)する前に一応の了解はもらった方が良いし、これからは本当にAさんが亡くなるまでお世話をする義務が生じますから、慎重に考えて下さいね。ちょっとでも難しいと感じるならこの話は忘れて下さい」と付け加えました。

相談者は全く予想していなかった方向へ話が流れ始めたので、宙に浮いたような、それでいて何か一つ一つを無言で頭の中で確認するかのように頷きながら、そんな仕草をしばらくしてから、徐々に元の表情にお戻りになっていき、
相談者「義理の姉と妹とが親子になれるの?」
千葉「問題なく大丈夫です」
相談者「手続きは面倒なの?」
千葉「私の知る限りは、書類は難しくないです。難しいのは親子になる人が本心で親子になりたいと思っているのかどうかの本心の確認です」
相談者「遺言書はどうなるの?」
千葉「もし、他の人の了解を得て養子縁組するのなら、お聞きする限り相続人は○○さん(相談者)だけになりますから、全財産を○○さん(相談者)へというご意思が変わらなければ、体調不良で入院されている方の病室でドヤドヤしながら遺言書を作らなくても良い気がします」
相談者「本当に大丈夫なの?」
千葉「もちろん、Aさんの戸籍は全部取得しないと分かりませんが、皆さんのお話が、戸籍上もそのままなら大丈夫と言うことになると思います」
相談者「私はこれから何をすればいいのかしら?」
千葉「Aさんや、その兄弟姉妹の皆さんにお知らせしてください。私は戸籍取得したり、養子縁組の書類など役場からもらってきます」

そして月日は流れ、現在はAさんも元気になり、相談者も元気にAさんのお世話をしていらっしゃるとのことです(親子として)。
相談者は、縁組とはいえ親子になってからは、それまで遠慮してキツイこと言えなかったのが、
「お母さん!ちゃんとして!って、説教できるようになったのよ~ 前より気分的に楽だわ~ 言いたいことが言えるっていいわね~」

・・・すべてがこのような展開になるわけではありませんが、なんとなく良い方向に流れているような気がします(笑)

(補足)
文中に出てくる兄弟姉妹の了解は法的な義務ではありません。了解がなくても縁組はできます。了解の趣旨は後の親族づきあいの円滑や、紛争の事前抑止のためにお願いしました。
事後的に取得した戸籍の中でも、申述通りの内容でした。
遺言書の作成は・・・そういえばみんな忘れてましたね。話題に出ませんでした。多分作って無いですね(笑)

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