ひろゆきが仕掛けた英語の無茶ぶり
2025年9月27日夜、自民党のYouTubeチャンネルで生配信された「ひろゆきと語る夜」という討論番組は、従来の政治討論とは一線を画す内容でした。
異例の討論会の舞台設定
この討論会には自民党総裁選の5人の候補者が参加し、インタビュアーを務めたのが論破王として知られるひろゆき氏でした。小林鷹之氏、茂木敏充氏、林芳正氏、高市早苗氏、小泉進次郎氏の5名が壇上に並び、約2時間にわたる討論が繰り広げられました。


番組は数万人がリアルタイムで視聴し、コメント欄も大いに盛り上がりました。ひろゆき氏は歯に衣着せぬスタイルで候補者たちに容赦なくツッコミを入れていきます。
突然の英語質問
討論が中盤に差し掛かったとき、ひろゆき氏は「外交に関して、これから総理大臣になったらトランプ大統領と話をする」と前置きした上で、突然英語で質問を始めました。
「What kind of country do you wanna Japan to be? So could you explain in English in one minute?」
日本語に訳すと「日本をどんな国にしたいか、英語で1分間でお答えいただけるとありがたい」という内容です。もちろん「やらなくてもいいんですよ、通訳いますからね」とフォローは入れたものの、この無茶ぶりに候補者たちは一斉に驚きの表情を浮かべました。
ひろゆき氏の質問の特徴事前予告なしの突然の英語質問
1分以内という時間制限
トランプ大統領との外交を想定
日本語での回答も許容するという逃げ道あり
各候補の瞬発力と英語力を同時に試す内容
苦笑いしながら思案の表情を浮かべる人、すぐさま手元の紙に何やらメモを始める人。5人の候補者は一瞬驚きながらも、それぞれの方法で準備し始めました。ひろゆき氏は「初めて観客がざわつきましたね」とニヤリとしていました。
高市早苗の「Japan is back」対応
5人の候補者の中で、高市早苗氏の対応は独特でした。完全に英語で話すわけでもなく、完全に日本語で逃げるわけでもない、バランスを取った戦略的な対応だったのです。
高市氏の具体的な回答内容
高市氏は「そうですね、私の場合はもうワンフレーズ」と前置きした後、力強く「Japan is back!」と英語で宣言しました。そして「今ちょっと存在感がないので、私は高らかに『ジャパン・イズ・バック』と、国連総会その他もろもろで叫ぶ日を楽しみにしている」と続けました。
その後は日本語に切り替えて、自身の政策ビジョンを詳しく語っていきました。英語を完全に避けたわけではなく、象徴的なフレーズで英語を使い、詳細は日本語で正確に伝えるというハイブリッド方式を選択したのです。
腹をくくった表情
高市氏がこの質問に答える際の表情について、複数のメディアが「腹をくくった表情」と表現しています。英語で長々と話すのではなく、短いフレーズで勝負すると決めた瞬間だったのでしょう。
この判断の背景には、自身の英語力を冷静に評価し、最も効果的な見せ方を瞬時に判断した政治家としての戦略性が垣間見えます。
ひろゆきの高市評価とその理由
ひろゆき氏は討論会の後、高市早苗氏の対応をどう評価したのでしょうか。この評価が多くの人にとって意外なものでした。
ひろゆき氏の直接的なコメント
討論会から2日後、ひろゆき氏はX(旧ツイッター)で「高市さんは好印象」とコメントしました。さらに別の番組では「高市さんの『Japan is back』は、まぁでも何も言わなかった小泉さんとか小林さんよりはマシで、英語をしゃべろうという努力は認めるべきだと思う」と述べています。


ニューヨークのエピソードを引き合いに
ひろゆき氏が高市氏を評価した理由として、別の討論会でのエピソードを引き合いに出しています。ニューヨークから来た英語を話す中高生から質問された際、高市氏はちゃんと英語で応答したというのです。
「相手が英語しか分からないんだったら、つたない部分があってもちゃんと答えるというので、高市さんはありだと思う」とひろゆき氏は述べています。この発言から、ひろゆき氏が評価したのは完璧な英語力ではなく、状況に応じて適切に英語を使おうとする姿勢だったことが分かります。
ひろゆき氏が評価したポイント英語を全く使わなかった候補よりは努力した
状況に応じて英語を使い分けている
相手が英語話者の場合はしっかり英語で対応
完璧さよりもコミュニケーション意欲を重視
短くても印象に残るメッセージを発信
他の候補者との対応比較
ひろゆき氏の英語質問に対して、5人の候補者はそれぞれ異なる対応を見せました。この違いが各候補の特徴を浮き彫りにしました。
林芳正氏の流暢な英語
最初に回答した林芳正氏は、ハーバード大学大学院卒業という経歴を持ち、流暢な英語で約1分間スピーチしました。「若者がやりたいことを自分で決断できるような国にしたい」という内容を、文法的にも発音的にも洗練された英語で語りました。
会場では「林さん英語でしゃべった方が分かりやすいし、いいこと言ってる」とひろゆき氏がツッコむと、観客から笑いが起きました。林氏本人も笑って、おどけた仕草をしていました。
茂木敏充氏の安定した対応
茂木敏充氏もハーバード大学大学院を修了しており、重厚で外交官的な英語を披露しました。ひろゆき氏からは「茂木さん、林さんは安定の英語対応」と評価されています。
両氏とも国際舞台での経験が豊富で、英語でのプレゼンテーションに慣れている様子が伝わってきました。
小泉進次郎氏の日本語選択
最も注目を集めたのが小泉進次郎氏の対応でした。コロンビア大学大学院を修了しているにもかかわらず、小泉氏は「ひろゆきさんの提案に乗ってはいけない」と笑顔で前置きし、一切英語を使わず日本語で回答しました。
ひろゆき氏は「一言も英語を言わない。大和魂的な」と、やや皮肉めいた表現で反応しました。視聴者のコメント欄には「コロンビア大じゃないの?」「エセコロンビア」といった揶揄する書き込みが殺到しました。
後にひろゆき氏はXで「英語で返さない小泉さん・小林さんは、話せないと思われても仕方ないよね」とコメントしています。
小林鷹之氏の慎重姿勢
小林鷹之氏もハーバード大学への留学経験があるにもかかわらず、「正確さを期すため日本語で」と明言し、日本語での回答を選択しました。
ひろゆき氏は後に「過去の経歴から見ても、それは人としてどうなの?って思っちゃうんですよ」と、英語を話さなかった小泉氏と小林氏に対して厳しい評価を下しています。
SNSとネット世論の反応
この討論会での各候補の対応は、SNS上で大きな話題となりました。特に高市氏の「Japan is back」については賛否両論が巻き起こりました。
高市氏への肯定的な反応
「高市さんの対応は戦略的で賢い」「完璧じゃなくても挑戦する姿勢が素晴らしい」といった肯定的なコメントが多く見られました。
「短いが記憶に残る一言だった」「ワンフレーズでも英語を使おうとした姿勢は評価できる」という声もあり、ひろゆき氏の評価に同調する意見が一定数ありました。
肯定的な反応のポイント完全に逃げなかった姿勢を評価
印象に残るフレーズ選択の巧みさ
自分の英語力を冷静に判断した戦略性
内容を正確に伝えることを優先
ひろゆき氏からの評価も追い風に
特に「相手によって英語を使い分けている」というひろゆき氏の指摘に納得する声も多く、単なる英語力ではなく、コミュニケーション能力として評価する意見が目立ちました。
批判的な意見も存在
一方で、「ワンフレーズだけで逃げた」「米国議会で働いていた経歴があるのに物足りない」といった批判的な意見も散見されました。
特に元宝塚女優の毬谷友子氏は、高市氏のASEANでの英語スピーチについて「ちょっと次元が違う」と否定的な見解を示し、話題になりました。「内容が伝わらない」という厳しい指摘もありました。


小泉氏への厳しい視線
ネット上で最も厳しい反応を受けたのは小泉進次郎氏でした。「コロンビア大学院修了という経歴は何だったのか」「英語が話せないのでは?」という疑念の声が多く上がりました。
学歴と実際のパフォーマンスのギャップが視聴者の失望を招いたと言えるでしょう。ひろゆき氏の「話せないと思われても仕方ない」という発言も、この印象を強化しました。
高市氏の英語力の背景
高市早苗氏の英語対応を理解するには、彼女の英語経験の背景を知ることが重要です。
米国連邦議会での実務経験
高市氏は1987年に松下政経塾の研修プログラムで渡米し、米国連邦議会でCongressional Fellowとして勤務しました。配属先は民主党下院議員パトリシア・シュローダー氏の事務所でした。
この経験を通じて、議員立法のための調査や分析、スピーチ原稿の作成補助、公聴会の準備といった高度な業務を英語でこなしてきました。単なる語学留学ではなく、実務で英語を使う経験を積んだのです。
実務英語の特徴
高市氏の英語は、ネイティブのような流暢さよりも「実務に役立つ現場型の英語」という特徴があります。専門用語や政策用語に強く、内容を正確に伝えることを重視するスタイルです。
発音については日本語訛りがあると指摘されることもありますが、国際会議でのスピーチや即興対応ができる実践力を持っています。IAEA総会では、準備していた原稿に加えて中国からの発言に対する反論を即座に英語で差し込んだというエピソードもあります。
討論会が示した政治家の資質
ひろゆき氏の英語質問は、単なる語学力テストではなく、予想外の場面での対応力や判断力を試すものでした。
瞬発力と戦略性
高市氏の対応は、自身の能力を冷静に判断し、最も効果的な見せ方を瞬時に選択した戦略的判断として評価できます。
完全に英語で話して失敗するリスクを避けつつ、完全に日本語で逃げることもせず、バランスを取った対応でした。これは政治家として重要な危機管理能力の一つと言えるでしょう。
誠実さと説明責任
ひろゆき氏が評価したのは、相手によって適切に英語を使い分ける柔軟性でした。英語話者に対してはしっかり英語で対応するという姿勢は、コミュニケーションの本質を理解していることを示しています。
一方、完全に日本語で答えた候補者については、学歴との不一致から「人としてどうなの?」という厳しい評価を受けました。予想外の場面での誠実な対応が、リーダーの資質として問われたのです。
討論会から見えたもの語学力以上に姿勢が評価される
瞬時の判断力が重要
学歴と実際のパフォーマンスの整合性
危機管理能力の有無
コミュニケーション意欲の差
英語力より大切なもの
この討論会を通じて見えてきたのは、政治家にとって英語力よりも重要な要素があるということです。
内容を伝える意志
ひろゆき氏が高市氏を評価した最大のポイントは、完璧な英語ではなく「伝えようとする意志」でした。つたなくても、短くても、英語を使って何かを伝えようとする姿勢が評価されたのです。
これは英語教育においても重要な視点です。完璧な発音や文法を目指すあまり、何も話せなくなってしまっては本末転倒です。
状況判断能力
高市氏が見せた「相手によって英語を使い分ける」という能力は、実践的なコミュニケーション能力の高さを示しています。
英語話者が相手なら英語で対応し、日本語が通じる場面では正確性を優先して日本語を使う。この柔軟性こそが、グローバル時代のリーダーに求められる資質なのかもしれません。
挑戦する勇気
完璧でなくても挑戦する姿勢は、多くの人に勇気を与えます。日本人の多くが英語に苦手意識を持つ中、国のトップを目指す政治家が堂々と英語を使う姿は、象徴的な意味を持ちます。
逆に、能力があるはずなのに使わないという選択は、視聴者からの信頼を損なう結果となりました。この点も、ひろゆき氏が指摘した重要なポイントです。
ひろゆき討論会の意義
今回の討論会は、従来の政治討論とは異なる新しい形式でした。
ネット世代への訴求
自民党がひろゆき氏を司会に起用したことは、若い世代やネットユーザーへのリーチを意図した戦略でした。実際、数万人がリアルタイムで視聴し、コメント欄も大いに盛り上がりました。
従来の堅苦しい政治討論では届かなかった層に、政治への関心を持ってもらう機会となりました。
予想外の質問の価値
ひろゆき氏の英語質問のような予想外の無茶ぶりは、候補者の本当の姿を引き出す効果がありました。用意された原稿を読むだけでは分からない、瞬発力や判断力、人間性が見えてきます。
高市氏の「Japan is back」も、林氏の流暢な英語も、小泉氏の日本語選択も、それぞれが候補者の個性と戦略を浮き彫りにしました。
SNSとの連動効果
討論会の内容はすぐにSNSで拡散され、様々な角度から議論されました。ひろゆき氏自身もXで発信することで、さらに議論を活性化させました。
この相乗効果により、一つの討論会が大きな社会的な話題となり、政治家の資質について多くの人が考えるきっかけとなりました。


